笑顔で言葉を交わす(右から)原口一博氏と大串博志氏。左は園田泰郎代表代行=24日午後、佐賀市の民進党県連事務所

 昨年10月20日。東京・永田町の会席料理店にJAグループ佐賀の傘下団体の代表者ら約20人が顔をそろえた。大串博志(52)の民進党政調会長就任祝賀会。主催した中央会会長の中野吉實が「われわれも決める時には決める」と含みのある祝辞を述べた。自民の集票マシンともいわれた農協の変容。「古川陣営がこの光景を見たらおののくだろうな」。参加者の予感は1年後、現実のものとなる。

◆歴史的勝利

 自公政権が大勝した全国情勢とは反対に、佐賀県では非自民が選挙区を独占した。県内で自民両候補が獲得した票は、比例で自公が集めた票より2万票以上少なかった。自民関係者はため息をつく。「大串は怒鳴られ、追い返されても笑顔で自民の地盤に顔を出し続け、最後は味方に変えてしまう」。大串と原口一博(58)。風に左右されない候補個人の人気が保守王国をぐらつかせた。

 県内政界図を塗り替える歴史的勝利。それでも民進党県連には緊張感が漂う。「本当の正念場はここからだ」。当選の歓喜に沸く大串事務所で県連関係者は真顔でつぶやいた。

 希望の党合流を巡り最終的に判断が分かれた原口、大串。2人の政治カラーと、希望がなじまないのは誰の目にも明らか。有権者は無所属で出馬した原口の行動を「勇気ある決断」と評価し、残った大串に批判が集中した。大串が逆風を跳ね返し、県連は「最高の結果」を手に入れたが、民進党籍を残す原口と、希望の大串という所属の違う衆院議員を抱えることになった。

 「全員で希望に合流する」という党の決定に従った大串が県連に残れず、独自の判断を貫いた原口が残るというねじれが起きかねない。県連関係者は最善の道筋として「希望と立憲民主、無所属、民進の参院が再結集し安倍政権に対抗する勢力となる。そうれば県連も団結できる」と語る。

◆静観

 しかし、地方議員の一人が語る最悪のパターンもあり得る。「大串が希望、原口が別の党で固定化すると地方議員も『どっちにつくのか』と迫られる。政党政治の渦にのみ込まれ、県連がばらばらになる」。民主党に維新の党が合流し、民進党が生まれた際、佐賀以外の県では地方組織が紛糾した。「一度、離れると再結集は簡単ではない」

 民進県連は1日遅れで大串当選が決まった翌日、常任幹事会を開いた。永田町でさまざまな動きが出る前に、原口、大串、県連メンバーが顔を合わせる機会をつくる狙いがあった。県連は成り行きを静観する。

 前原誠司代表は25日、選挙後に参院議員も希望に合流する計画を見直し「参院も地方組織も割れずに残っていただきたい」と民進存続を容認した。地方組織にも事情を説明するとしているが、先行きは見えない。

 元副総理の岡田克也らと衆院で新会派「無所属の会」を結成した原口は「穏健保守から社民リベラルまで連携し、政権交代可能な選択肢をつくる」と意欲を見せ、希望で始動した大串も「政策が違うと排除していると野党議員の責任が果たせない。ウイングを広げる方向に野党全体で持っていく」。思いは重なる。次の参院選まで2年足らず。野党の矜恃(きょうじ)が問われている。=敬称略

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