台風の影響で離島から衆院選の投票箱が運べず、開票が繰り延べされた唐津市。国政選挙で即日開票されなかったのは異例で、選管の対応をめぐっても物議を醸している。こうした事態にも備えた解決策の一つとして、電子投票の導入も選択肢に加えてはどうか。

 電子投票は、投票所でタッチパネルやボタン式の電子投票機を使って投票する方法や、パソコンやスマホで遠隔地からオンラインで投票する方法などがある。ここでは前者を「電子投票」、後者を「ネット投票」と使い分ける。ちなみにネットを利用した選挙活動は「ネット選挙」で、投票行為とは明確に区別する。

 電子投票は2002年、電磁記録投票法の施行により、条例を定めた自治体で行われる地方選挙に限り、電子投票機を使った投票ができるようになった。同年6月、岡山県新見市長・市議選で全国初の電子投票が行われ、全国10市町村でも導入された。

 しかし翌03年、岐阜県可児市議選と神奈川県海老名市長・市議選で機器トラブルが発生。可児市議選は裁判で選挙無効となり、導入の機運は急速にしぼんだ。その後も市町村合併に伴い条例が引き継がれなかったり、財政難だったりを理由に廃止が相次いだ。

 電子投票は、投票をデータ化して処理するため開票作業の時間や人件費が大幅に削減され、判読不明の無効票も生じない。有権者にとっても画面をタッチするだけの手軽さがあり、手に障害がある人の代筆投票も解消できるなどメリットがある。今回のように、台風で投票箱が運べないという物理的な問題も生じない。

 電子機器トラブルは、発生から15年近くがたった今となっては改良されているだろう。課題は導入コストの高さか。スマホなどを使うネット投票であれば、そのハードルは下がるが、これまたメリットよりもデメリットが多いとして導入される気配すらない。

 ネット投票の懸念はまず、セキュリティー面。投票所に行き、入場整理券を渡して本人確認する現行と違い、自宅からスマホで手軽に投票できる代わりに、なりすましができる可能性がある。ほかにもサイバー攻撃などによるデータの改ざん、流出などリスクは枚挙にいとまがない。

 ただ、こうした技術的な解決が可能な問題より、ネット投票は秘密投票の確保が難しいとされる。公選法は46条で無記名投票、52条で投票の秘密保持が保障されているが、例えばある団体が組織に属する者を集め、スマホ画面を監視しながら支持候補への投票を強制し、確認する行為が可能になる。現行制度下では職場などを通じ要請があっても、投票所で自分の考えで投票先を変えることができ、それを知られることもない。こればかりは技術的解決が難しい。

 とはいえ投票率の低下、特に若者の低投票率が続く中、ネット投票が実現すれば、投票率向上に大いに役立つだろう。ネット選挙が解禁された今、論議にすらなっていない電子投票を俎上に載せる時ではないか。

 まずは離島に限って電子投票を導入するとか、期日前投票で利用してみるなど、できそうなところから取り組んでみてはどうだろう。論議が始まることを期待する。(森本貴彦)

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