これは、地方軽視への異議申し立てではないか。衆院選佐賀選挙区で、自民候補が全敗するという異変が起きた。

 1区は無所属の前職原口一博氏が自民候補に2万6千票以上の大差をつけて勝利した。2区も、希望の党から出馬した前職の大串博志氏が、県知事を3期務めるなど高い知名度を誇る自民前職との競り合いを制した。

 保守王国・佐賀で、いったい何が起きたのか。

 佐賀県は、国との距離感がきわめて近い。というのも、国策に絡んだ政治課題がいずれもヤマ場を迎えており、国がどのように佐賀に向き合っているのか、そのふるまいがつぶさに伝えられてきたという事情がある。

 具体的には、自衛隊が導入する輸送機オスプレイを佐賀空港へ配備する計画をはじめ、開門調査さえ応じてもらえぬ国営諫早湾干拓事業、フリーゲージトレイン(FGT)を走らせると約束されていた九州新幹線長崎ルートの迷走、そして、九州電力玄海原子力発電所の再稼働である。

 私たち地元の意向を、国はどれほど尊重してくれただろうか。ないがしろにしてはいないか、置き去りにしてはいないか。そうした不満の積み重ねが、今回の選挙結果にも表れたのではないか。

 これらの国策は選挙戦の争点でもあり、例えばオスプレイ配備であれば、推進の自民候補と、反対や慎重姿勢を示した非自民の違いははっきりしていた。原発再稼働も「重要なベースロード電源」と引き続き活用する自民と、「2030年原発ゼロ」を打ち出す希望で将来像に違いがあった。

 いずれの事業でも、国は「地元の理解を得たい」「丁寧に説明していく」などと繰り返してきたが、その言葉とは裏腹に「結論ありき」で推し進めようとする姿勢が目につく。そこに、圧倒的な議席を握った政権与党のおごりを重ねた有権者も少なくなかったのではないか。いわば、自民政治に対する不信である。

 加えて、原口、大串両氏は組織力では自民党に劣るものの、「原口党」「大串党」と呼ばれる熱烈な支持者を抱える。自民党にとっては、長年自民党を支えてきたJAグループ佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」が、今回は推薦を見送り、「自主投票」としたのも痛手となった。

 中央の論理にただ従うのか、それとも地元の代表として中央にきちんと働きかけてくれるのか-。その基準が、投票行動に影響した可能性があろう。

 安倍晋三首相は、大勝にもかかわらず、「自民党へ厳しい目が向けられている。今まで以上に謙虚に、真(しん)摯(し)に政権を運営したい」と低姿勢に徹している。今回の選挙は野党の敵失で救われたものの、内閣支持率は低迷し、風向き次第で状況は一変しかねないからだ。来月1日には首相を指名する特別国会が開かれ、第4次安倍政権がスタートする。来秋の総裁選で再選を果たせば、2021年までの憲政史上最長内閣が見えてくる。

 今回、佐賀で示された民意は「地方の声をしっかり受け止めているか」という問いかけである。佐賀での敗北を小さなほころびと軽んずることなく、安倍首相には緊張感を持って政権を運営してもらいたい。

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