衆院選の離島分の票が届き、開票作業をする唐津市職員=23日午後、唐津市文化体育館

 自民、公明の与党勢力が3分の2を確保し、安倍政権を「信任」した格好になった衆院選。佐賀県内の2選挙区では、強力な地盤を誇っていた自民党が敗れ、ともに比例で復活するなど全国の情勢と異なる結果になった。慎重な議論の積み重ねを国政に求める声が強く、与党に1票を託した有権者からも「消極的支持」がのぞき、注文が相次いだ。

 「消去法かな」。2児の母、東真理子さん(37)=佐賀市=は与党に1票を投じたが、積極的な支持ではないことを強調した。幼児教育の無償化に注目して他党の公約も見たが、「財源に踏み込んでいないのが問題」と受け止めた。

 2歳の子どもを育てる神埼郡吉野ヶ里町の母親(37)も「変化を求めても、今の生活に希望が持てない限りは仕方ない。それよりも今掲げていることを進めてほしい」。継続がよりよい選択と考え、自民党に投票した。「待機児童も切実な問題。幼児教育無償化とともに、しっかりと対応して」と注文した。

 選挙権年齢が18歳に引き下げられて初めての衆院選。佐賀大学医学部1年の古賀隆太さん(18)=佐賀市=は自民党を支持していたが、無所属で出馬した原口一博氏に投票、政党ではなく人で選んだ。排除の論理や損得勘定が垣間見えた野党再編の動きに「いいイメージがない」中、原口氏が「筋を通した」と映った。医療制度に関する主張に身近さも感じた。

 改憲勢力が憲法改正の国会発議に必要な3分の2を超え、論議が加速する可能性が出てきた。飲食店経営の山内哲朗さん(69)=佐賀市=は、自民党が掲げる憲法への自衛隊明記に「国際的に好戦国と捉えられるのでは」と疑問を抱く。「国民の同意(信任)は6割ということを肝に銘じ、謙虚さを持ってほしい」と拙速な論議をけん制する。

 一方、元自衛官で嬉野市シルバー人材センター事務局長の田代誠盡(せいじん)さん(72)は「改憲を争点にしたのは歴史に残る功績」と捉え、「国防は国家を維持するためには最も大事なこと」と論議の進展を期待した。

 来年1月に玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)の再稼働を控えるが、選挙戦では原発政策への言及は乏しかった。30キロ圏の伊万里市に住む主婦川久保久美子さん(60)は「なぜ争点にならないのだろう」と疑問を抱く一方、各候補の政策は党方針に縛られる傾向が強いため「国政選挙で争点にするのは難しいのかも」とも考える。それでも将来が気がかりで、新選良には「廃炉と核のごみ問題に、しっかり取り組んでほしい」と求めた。

 

■「地方の声、反映を」県内経済界

 自民党が圧勝した衆院選を受け、佐賀県の経済界は長期安定政権を期待する一方、自衛隊輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画や農業改革などを巡っては、地方の声を聞き取って政策に反映するように求めた。

 「安倍政権の経済政策を評価した結果」。県建設業協会の中島博文専務理事はこう分析し、「佐賀の声が中央に届くか懸念はあるが、政治の安定で業界は盤石になる」と歓迎した。

 県商工会議所連合会の井田出海会長は「国防の重要性が認識されたのではないか」と指摘し、安倍晋三首相の北朝鮮への対応も圧勝の背景にあるとみる。

 一方で、県有明海漁協の徳永重昭組合長はオスプレイ計画に「数で押し切るような形にならないで」とくぎを刺す。推薦した自民党候補が小選挙区で敗れたことに関し、国営諫早湾干拓事業を含め「国政絡みで多くの問題を抱え、有権者個人ではいろんな考えがあるのだろう」と推し量った。

 自民党を支援してきたJAグループ佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」は、衆院選で初めて自主投票とした。金原壽秀会長は「急進的な農業、農協改革に対する不満が高まっていた」と指摘する。選挙戦で「地方への配慮が足りなかった」と省みた与党候補もいたことから、「選挙が終わってもその思いを携え、現場の声を踏まえた国政運営をしてほしい」と要望した。

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