勝負の世界に生き、修羅場をくぐった人の言葉は深い。直木賞作家の色川武大はプロの雀士の経験があり、阿佐田哲也の名で『麻雀放浪記』など麻雀小説も書いた。その彼が「何もかもうまくいくということはありえない」と勝負と運の関係を言っている◆全勝を目指すのはアマチュアで、プロは持続を旨とする。全勝を狙えば、多くのロスが出るからだ。大相撲なら9勝6敗くらいの維持を目標にやっている人がプロなのだという。こんな人には「一目おかなければいけない」と随筆集『うらおもて人生録』に記している◆さて、「国難」という言葉を掲げ、安倍晋三首相が仕掛けた今回の衆院選である。今なら勝てると思案し、「最後は勘だ」と言ったらしいが、勝負に打って出て結果は勝利。これで政権奪還選挙を含め、安倍氏が旗頭になっての大型国政選挙で5連勝に◆小池百合子都知事が参戦し一時は台風の目になったものの、「排除の論理」を巡るごたごたで失速。野党が分裂しては自民に勝てない証しとなった。佐賀では2区の結果は持ち越したが、1区は非自民が死守して気を吐いた◆自民の勝利は「敵失」の感が大きく、国民が全幅の信頼を寄せた結果とは限らない。「ツキに恵まれ連勝した後が本当は怖い」という意味のことを色川は言っている。そう、慢心の戒めである。(章)

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