安倍政権の5年が問われた第48回衆院選は、与党の勝利に終わった。自民党単独でも議席数は過半数に達し、すべての常任委員会の委員長ポストを与党で押さえる「絶対安定多数」を確保した。

 獲得した議席数だけを見れば、安倍政権が信任を受けたと言えそうだが、どうだろうか。

 安倍首相は「国難突破解散」と名付けて、解散の大義を北朝鮮情勢と消費税増税分の使い道変更と説明した。これで、納得した国民がどれほどいただろうか。森友、加計学園問題で自らに向けられた疑惑の目をそらし、野党の選挙準備が整わないタイミングを狙ったという見方が大半ではないか。

 それぞれの選挙区をつぶさに見れば、与党の支持が決して盤石ではない実態が見えてくる。

 例えば、米軍の大型輸送ヘリコプターが墜落事故を起こした沖縄県では、与党候補は苦戦を強いられた。立憲民主と共産、社民の野党3党が共闘した北海道の選挙区でも、与党は劣勢だった。

 まれに見る激戦となった佐賀県でも、1区で無所属の前職原口一博氏が、組織力で上回る自民党候補を振り切った。希望の党から無所属に切り替えた結果、共産党が独自候補の出馬を取りやめるなど野党共闘が実現したのも大きい。政権批判の受け皿として広く票を集めたとみられる。

 県内は、国策に絡む政治課題が多い。自衛隊が導入する輸送機オスプレイの佐賀空港への配備計画をはじめ、国営諫早湾干拓事業の開門調査問題や原発再稼働など、国策と地元の利害がぶつかり、県民の意見も大きく割れている。

 中でもオスプレイ配備については、県民の間に反対意見が根強い。推進を鮮明にした自民党候補に対して、原口氏は反対を訴えており、県民の声を国政に反映させるよう期待したい。

 特に指摘しておきたいのは、内閣支持率が低迷し、「不支持」が「支持」を上回る状況が続いている点である。今回の選挙結果と合わせると、自民党の安定感を支持してはいても、必ずしも安倍政権の継続を望んでいるわけではないという有権者の心理が浮かび上がってくる。

 もはや、安倍1強ではない。安倍首相は獲得議席に慢心することなく、異なる意見にも耳を傾けながら政権を運営してもらいたい。

 それにしても、野党のふがいなさはどうか。小池百合子都知事率いる希望の党は「排除の論理」で失速。首相指名で誰を推すかもあいまいにする戦略は、政権選択の体をなしてさえいなかった。

 さらに与党に追い風だったのは、北朝鮮の不穏な動きである。場当たり的な外交を繰り返した民主党政権時代の記憶がよみがえり、有権者の選択に影響したのではないか。

 国会の勢力図は一変した。解散前は存在しなかった立憲民主党が政権批判の受け皿となり、政権と対峙(たいじ)する構図になる。

 これからの4年間はこの国にとって、大きな意味を持つ。与党を含めた改憲勢力は3分の2以上の議席を握り、憲法改正が現実味を増す。この国の根幹にかかわるテーマであり、国民的なコンセンサスが欠かせない。委ねられた議席を強引な政権運営に用いることなく、丁寧に議論を重ねる謙虚さを強く求めたい。(古賀史生)

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