県人権擁護委員連合会理事、元小学校長 牟田恭子

■出来事の裏側にも視点を 見出しに臨場感、胸突く

 11月、秋祭りの2大カラー写真「熱気球世界選手権」「唐津くんち」が、秋の薫りとともに平和の証しを美しく訴えた。一方で、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領関連ニュースが連日掲載された。世界の明暗を味わいながら、「有明抄」へ目を移すと、「トップは辛い。折れそうになる心をどう保つか。思いを同じくする方もおられよう」。記者は一国を担う朴大統領を、誰かに頼らざるを得ない弱き人と見た。国の平和と乱れの両面掲載。トップの座とその弱さ。いつも紙面を相反する内容でドラマ化する手法は、読者の心理を不思議と落ち着かせている。しかも、末文、「同じくする方もおられよう」と、読者の心に一灯をともす。

 また、熱気球世界選手権大会では毎日、多面的に参加者の声が届けられた。2日の「ひろば」欄では、亡き父と息子の3人で歩いたバルーン大会への道の思い出、11日は飛行オフの日に長崎原爆資料館に担当チームを連れて行ったボランティアなど、各方面の活動の声が紹介され、よかった。

 ただ、残念ながら裏が見えてこない。現場での交通整理の方やトイレ清掃ボランティアなど、表には出にくい活動にも視点を当てたインタビューが欲しかった。底を支えてくれる人々だけに、読者の驚きと敬服の念が湧き、紙面の深みもより期待できたのではないだろうか。

 2日の「唐津くんちが文化遺産に」はタイムリーな論説だった。日頃、祭りやくんちは表の鮮やかな、勇壮な絵巻物として掲載されることが多い。論説委員はくんちの原点を掘り起こし、これからのまちづくりの展望を記している。町民の気概を前面に出すことで文化の重要性が分かり、その情熱が今後のくんち継承へとつながるだろう。

 もう一つ、タイムリーな記事を10日、発見した。「七宝丸の修理作業~フェイスブックから」である。七宝丸の修理作業を曳(ひ)き子らが徹夜でやり終えた厳しい数時間を唐津支社長がSNSで広め、反響の多さと素晴らしさを交え、深めるかたちで記事化した。「正視できず・一生忘れない光景・寒中の中も必死に・心も技術もつなぐ」。見出しに要約された4シーンは伝統文化の重さと継承していく責任の厳しさを表しており、支社長が地域にいかに根付いた上での取材かが証明される。裏情報の魅力だ。

 最近、見出しやタイトルに変化を感じる。単発で読者の関心を引く表現への変化だ。9日の博多駅前陥没事故では「離れろ、脱出間一髪」。12日の「わが家の器ものがたり」では「料理上手な妻、思い出ふと」。23日の福島地震の「命守れ 次々高台へ」。臨場感が胸を突く。

 変化の裏には記者の努力があるのだろう。10日の「記者日記・酒屋と見出し」で、ネットでは読者が気になる記事だけしか見ないことにヒントを得、見出しを練る必要性に気づいた記者の思いに感激した。

 裏の見え隠れは、読者にとって魅力であることはもちろん、記事本来の味をさらに深める。このように、ネットやSNSを報道ツールとしてどう生かすか。今後の新聞のありようを示す課題となるであろう。

=11月分=(むた・きょうこ、唐津市)

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