憲法に関する各党の公約。自民党が憲法への自衛隊明記を掲げ、9条を変えるかどうかについても有権者の関心が集まる

■平和と安心 担保が欲しい

 テレビに映る「同僚」の姿に見入ったという。7月に福岡、大分県を襲った九州北部豪雨。画面の向こうでは自衛隊員が活動していた。「呼ばれれば、期待に応える決意と自負はあった」。佐賀県内で自営業を営む40代男性は、非常勤の即応予備自衛官。招集はされなかったが、仕事を長期間、休む覚悟をしていた。

 自衛隊を取り巻く環境は近年、大きく変わってきた。東日本大震災など災害支援で存在感を増し、2015年の内閣府の世論調査では、自衛隊に好感を示す回答は9割と過去最高になった。一方で、安保法制で自衛隊の活動範囲が一気に広がり、米軍との一体運用が強化された。

 予備自衛官は年間30日、射撃や屋外での訓練を受ける。「安保法制成立後、上官の見る目が厳しくなった」。男性はそう感じる。射撃や専門任務の要求水準が正規の自衛官並みになった。

 「有事の最前線に出ることはない」と聞いているが、絶対ではないと半ば覚悟もしている。北朝鮮情勢や南西諸島を巡る中国との関係を考えると、自衛隊しか対応できないとみている。重責が増すからこそ、自衛隊の位置づけをはっきりしてほしいと思う。「違憲だとかいわれる中途半端な状況で力は発揮できない」

 衆院選で自民党が憲法への自衛隊明記を公約に掲げ、戦争放棄や戦力不保持をうたう9条を変えるべきかどうかが争点になっている。希望の党や日本維新の会が改正に前向きな姿勢を示す一方、自民と与党を組む公明党は慎重姿勢で、共産党や立憲民主党、社民党は反対の立場だ。

 佐賀新聞社の有権者100人へのアンケートでは改憲「賛成」が41人で、「反対」の27人を上回った。ただ、9条に関しては複雑で「9条と自衛隊の関係は矛盾している」(鹿島市の10代男性)と改憲を認める意見がある一方で、「平和国家としての歩みは不変」(佐賀市の70代男性)、「自衛隊の活動領域が無制限に広がるのが怖い」(有田町の40代女性)と懸念する声がある。

 朗読を通して平和や命の大切さを訴える活動を続ける唐津市の主婦吉田加代子さん(70)は「戦後72年、日本が争いに巻き込まれずに歩むことができたのは9条のおかげ」と考える。ただ、戦争を知る世代が細る中、自衛隊を肯定的に考える人が増え、国際情勢に緊張感が増すなど「環境が変わってきている」とも感じる。

 平和主義の礎といえる9条は守りたい。でも、どうすれば不安を拭えるのか、「具体策の議論も必要」と感じている。平和と安心の両方を担保する解決策がほしいと願う。

 16日、佐賀大経済学部の憲法学のゼミ。改憲が争点に浮上していることもあって、担当教員が「投票に行こう」と呼び掛けた。

 4年の古賀裕也さん(22)=鳥栖市=は「これまで政治の本気度が伝わらなかったけれど、今回は結果次第で本格的な改憲論議につながるのでは」とみている。「普段は身近に感じないけれど、国を縛る特別で大事な法律。一人一人が向き合って考えないと大変なことになる」。投票して政治側に付託するだけでなく、選挙後の議論にこそ注目しなければ、と感じている。

=おわり

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