農作業をしていた有権者に声を掛ける候補者=伊万里市(一部を画像加工しています)

■各陣営取り込み躍起

 

 終盤に入った衆院選は、農業票の行方が勝敗を分ける一つのポイントとして注視されている。長年自民党を支えてきたJAグループ佐賀の政治団体「佐賀県農政協議会」(金原壽秀会長)は、安倍農政への不信から昨年の参院選に続いて「自主投票」を決めた。正、准組合員合わせて約12万人。しのぎを削る各陣営は巨大な“浮動票”を取り込もうと、地域レベルで躍起となっている。

 

 16日、佐賀市のJR佐賀駅前。自民党前農林部会長の小泉進次郎氏は応援演説の冒頭、こう訴えた。「マクドナルドは佐賀県がないと回らないんです」。全国規模の飲食店やコンビニにカット野菜を提供するJAさがのグループ会社の業務を引き合いに、佐賀農業を持ち上げた。ただ、農協改革の急先鋒(せんぽう)ともいえる小泉氏の発言。「今更褒められても」。遠巻きに見守ったJA職員の反応は冷ややかだった。

 県農政協は民主党政権下も含め、長年自民党と共同歩調を取ってきた。陣営の手足となって動き、「集票マシン」とも呼ばれた。だが、環太平洋連携協定(TPP)交渉や農協改革、日欧の経済連携協定(EPA)の大枠合意など、官邸が主導する「現場無視」(県農政協幹部)の農業政策に不信感は募るばかり。保守分裂となった2015年の知事選で生まれた感情的なしこりも消えないままだ。衆院選の推薦協議は一度でまとまらず、公示前日になって自主投票とする異例の対応だった。

 「前回(14年)はわれわれの思いをくんでくれる与党内抵抗勢力をつくろうと、反発を押さえ込んで推薦した。だがさらにひどくなったという声もあった」と県農政協幹部。「知事選と違い、(推薦の)錦の御旗がない」と漏らす。

 県レベルで自主投票となる中、激戦の2区で唐津支部は自民前職の古川康候補を独自に推薦する。支部長の堤武彦JAからつ組合長は「安倍政権に対し、内部でしっかり意見を通してもらわないと。外からでは変わらない」と強調。農政協職員を事務所に派遣し、最後のてこ入れを図る。一方、希望前職の大串博志候補は「上から目線の農協改革」と批判し、前回苦戦した伊万里市などで着実に農業者の支持を広げている。

 長年自民を応援してきたコメ農家の男性(67)は経済優先の農業政策を批判し、「農業の大規模化も必要だが、地域社会を保つためにも小さな農家や中山間地を大事にして」と注文。畜産の50代男性はTPPやEPAで海外との価格競争にさらされることに危機感を募らせ、「対策を取るというが、どこまで信用していいのか。長期的なビジョンを示して」。

 一方、施設野菜農家の男性(37)は「農業は補助金で成り立つ部分もあるが、国に頼らず、個人で成長しなきゃいけない部分もある」と改革の方向性に一定の理解を示す。

 選挙戦終盤、各候補が決起集会や街演で農業政策に触れる機会は増えてきた。現場の声を届けてくれるのは誰か。農家は最後まで見極めている。

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