秋。コスモスの傍らに生えるエノコログサ

 仕事の行き帰り、コスモスが美しい。そばにはエノコログサが生えている。茎が細長く、風雨に耐え、しなやかで強い。このような草を勁草(けいそう)と言うが、中国古代の故事に「疾風に勁草を知る」ということわざがある。困難や試練に直面した時、初めてその人の意志の強さや節操の堅固さ、人間としての値打ちが分かることのたとえだ。この話をフェイスブックの友人が投稿していて、今の私の心に響いた。

 私が勤める蔵では経営者が代わって、これまで苦楽を共にした人たちが突然去った。私は酒蔵を守りたく新人社員2人と無我夢中で業務に取り組んできた。

 そして3人目の新人、45歳のIさんが入社してきた。彼は子どもを大学に通わせるため、慣れ親しんだ仕事を辞めたそうだ。もともと酒造りに興味があり、やっとそれが実現したと喜んでいる。45歳の一大決心。これが最後のチャンスだと自分に言い聞かせているらしい。

 思い起こせば、私も45歳の頃は鹿島の酒蔵にいながら気持ちがフラフラしていた。Iさんはちょうどその頃の私と重なる。日本酒がどんどん売れなくなっても、夢と希望は持っていた。

 66歳の私はいまだ一度も自分で満足する酒を造ったことがない。だからベクトルを一にするIさんには私以上の大きな夢と希望を持ってもらい、併せて、肥前杜氏の酒造技術を継承してもらいたい。そのために私も頑張らなくてはならない。

このエントリーをはてなブックマークに追加