〈敬は一心の主宰、万事の根本にして、万世聖楽の基本たり〉。多久の4代邑主多久茂文は、そんな思いで教育を振興し、敬う心を養うため、江戸中期の1708年に孔子を祭る聖廟を建てた。以来、多久の人々の心のよりどころである◆その廟も、明治維新後や太平洋戦争直後は荒廃や解体の危機と、苦難の時代があった。守ったのは地元や旧多久邑の人たち。今、境内の清掃などに心を砕き、お世話するのは「聖廟被官」の家を継ぐ荒谷典子さん(76)や管理人の吉松幸子さん(67)だ◆6代邑主茂明の時代、足軽から侍に取り立て聖廟被官とした。それから約300年。荒谷さんは、廟を囲む〓(サンズイに半)池(=はんち=小川、溝)の手入れを行い、月2回、廟への酒や赤飯のお供えも欠かさない。「地元やご先祖が大切にしてきたもの。心を込めてやっている」と言う◆吉松さんは、市から廟の管理を任された公益財団法人「孔子の里」職員として、6年前から管理人を務める。境内の掃き清めや朝夕の点検などが仕事だ。「多久の宝であり学問の神様。おかげさまで合格しました、と記帳簿に書いてあるとうれしい」と笑顔で話す◆22日には伝統行事の「釈菜」が開かれる。孔子さまの教えや、聖廟を支えてきた多くの人たちの思いに触れることができる。秋の一日、いにしえの風に吹かれてみるのもいい。(章)

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