INTERVIEW 作家 竹本健治さん

〝好き〟を自分なりに追究

 武雄市山内町在住の作家・竹本健治さん。IQ208の囲碁棋士が主人公の推理小説や、自身や実在する作家が登場するミステリーなどさまざまな作品を世に送り出しています。昨年3月に発行した著書「涙香迷宮」は、第17回本格ミステリ大賞小説部門、このミステリーがすごい2017年版の国内編第1位に。竹本さんに本との出合いや楽しみ方、佐賀での暮らしのことなどを聞きました。

■本との出合いは?

 活字中毒というほどではないにしろ、小さい頃からとにかく本は大好きでした。実は作家を目指していた訳ではなく、漫画家志望だったんです。だから漫画はよく読んでいて、母親の婦人雑誌についていた家庭の医学的なものもむさぼり読んでいましたね。最初にミステリーにはまったのは小学2年生のとき。盲腸で入院中に、親がシャーロックホームズの子ども向けの本を買ってきてくれて。それを読んで、こんなにおもしろい話があるのかと。立て続けに江戸川乱歩の少年探偵団シリーズも読んで、推理小説っておもしろいなあと思ったんです。これが僕とミステリーの出合いですね。

■書くきっかけは?

 漫画は小学3年生くらいのときから、ちゃんとしたケント紙を買って書いていました。漫画がうまいクラスの友達と近くの大学生と3人で同人を組んで、肉筆の同人誌を出したり。中学校に入って出会った友人に詩とか長編小説を書いているやつがいて、彼に触発されて詩や小説も書き始めました。その頃は、ファンタジーや江戸川乱歩のミステリーのまねごとみたいなのも書いていましたね。学校は中高一貫の男子校だったんですけど、彼に誘われて中学2年から高校卒業するまで5年間文芸部に入りました。詩や小説を書いたり、機関誌も出していましたよ。

■作品のアイデアやインスピレーションはどこから?

 やっぱり最初は漫画にしろ小説にしろ、自分が好きな作品をいろいろ読んで、自分にもこんなのが書けるかな、書きたいな、書いてみようという感じですね。もともと好きだった囲碁など趣味が創作に役立つこともあります。

■作品づくりがきっかけではまったものは?

涙香迷宮

 プロになってからは「こういうテーマで書いてみよう」と勉強していろいろ知ると、それが面白くて結果的にはまるということもありました。「涙香迷宮」に関しては、ツイッター上で「いろは歌(※1)」をたまたまやり出して、やってみるとすごく面白くてどんどんはまって。まずはじめに暗号いろはを作り、この暗号を組みこむにはどんな筋立ての話にすればいいかを考えていった、という順序です。そしてこの作品を書くにあたって黒岩涙香(※2)という実在した人物をいろいろ調べたんですが、知れば知るほど涙香という人物のすごさが分かって、その人物自体にはまりましたね。

※1…すべての仮名を重複させずにすべて使って作る詩歌のこと
※2…明治に活躍した小説家、翻訳家、ジャーナリスト。涙香迷宮では涙香が残した暗号が重要な鍵をにぎる

■本の楽しみ方を教えてください

 ほんとうに本の読み方って人それぞれで、好みも千差万別ですよね。僕は自分なりのやり方で本を楽しんでいるけど、それがいろんな人に当てはまるわけでもないので、それぞれ自分のやり方で楽しんでもらえれば。娯楽ってそんなもんじゃないかと僕は思います。
 しいて言うなら、自分が好きなタイプや方向性を自分のアンテナでどんどん探っていって新たなものを見つけるような、能動的な読み方をしたほうが楽しいんじゃないかな。

■本を読むのが苦手な人にアドバイス

 苦手なら、それはそれでいいと思います。「本を読んだほうがいい」という昔からの風潮はありますけど、本にこだわらなくても、自分が好きなものを自分なりに追究していくことが大事なんじゃないでしょうか。

■佐賀・武雄の印象は?

 僕が住んでいる山内町は全体的にのんびりした雰囲気。僕にはとても快適ですね。お気に入りの場所は山内町内の泥縄窯(どろなわがま)。妻はそこの焼き物がお気に入りです。山内は妻の実家があって度々来ていたし、家族同士の会話で佐賀弁も出るのである程度は慣れていたけれど、地元の人同士が話しているのを聞くと7割くらいは分かりません(笑)。なんのことかな~?と思って聞いています。

■今後の予定は?

 11月にミステリー作家の綾辻行人さん、我孫子武丸さん、漫画家の喜国雅彦さんとトークショーをする予定です(応募はすでに締め切り)。来年は伊万里市、再来年は佐賀市で開催する予定なので、興味のある方はぜひ参加してほしいですね。

 

 

たけもと・けんじ/1954年兵庫県生まれ。1977年「匣の中の失楽」でデビュー。ミステリーのほか、SFやホラー、ファンタジーなど独特の作風で多くのファンを魅了する。佐賀新聞囲碁欄に「橘中天」の名前で棋譜解説を掲載中。武雄市山内町在住。

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