「がんの化学予防」という耳慣れない取り組みをこのコーナーで紹介して7年が過ぎました。緑茶カテキン、大豆に含まれるイソフラボン、野菜に広く含まれるケルセチン、トマトのリコピン、赤ブドウのレスベラトロールなど多くの成分が試験管内でがん細胞の増殖を抑えることが分かっています。

 それらの成分を用いて積極的にがんの発生や進展を抑えようとする取り組みが「がんの化学予防」ですが、残念ながら予防薬として世界に認められた成分はまだありません。

 その理由は、一つの成分だけを取り出して摂取すると作用も強くなりますが、逆の副作用も現れることや、数十年という長い年月でがんは大きくなるので、はっきりとした予防効果を証明することが困難なことが挙げられます。

 しかしながら、だからといってそれらの成分を含む食物を積極的に取ることが無意味であるということにはなりません。大切なことは、毎日摂取することが可能な緑茶は別として、それ以外の植物や果物に含まれる成分を偏ることなくバランスよく取り続けることです。また、どんなに体に良い成分を摂取してもそれ以上に体にとって害のあるたばこや過剰なアルコール摂取をすると、それらのいい効果が一気に消えてしまうことも理解することが必要です。

 一方で、私たちは自分の体の健康状態を知ることも必要です。定期健診を受けることや血液検査を受けることも大切ですが、体調を比較的敏感に表す皮膚の状態や睡眠の深さ、便通(便の性状も)など毎日の自分の体の調子を示す「声」にも注意を傾けてください。

 (佐賀大医学部附属病院 検査部長・末岡榮三朗)

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