特撮のDNA展で造形師若狭新一さんのギャラリートークに耳を傾ける来館者ら=佐賀市の県立美術館

 誰も見たことがない世界を具現化する「特撮」と、空想上の生き物である怪獣にリアリティーをもたらす「造形」―。その魅力に迫る「特撮のDNA展―怪獣の匠(たくみ)」が佐賀市の県立美術館で開かれている。日本初の巨大怪獣ゴジラが登場する映画「ゴジラ」(1954年)から、昨年大ヒットした「シン・ゴジラ」まで実際に撮影で使われた怪獣スーツなど約200点を展示、マニアだけでなく、幼い時に怪獣映画に胸躍らせた年配の人など幅広い世代の人気を集めている。

 会場に並ぶゴジラ、モスラ、戦車やロケットのミニチュア。これらを創り出した造形師の仕事にスポットを当てた展示は、まさにエンターテインメントの世界。特撮の神様といわれた円谷英二から継承されてきた技術と造形は、現在の怪獣造形の第一人者である若狭新一さんに受け継がれてきた。若狭さんは、幼い時に「ウルトラQ」や「ウルトラマン」をテレビで見て怪獣にあこがれ、造形の仕事に入って40年。「自分が作ったものが美術館で展示されるのは初めて」と感慨深く語る。

 会場では、初期作品をリアルタイムで見た世代には、たまらない作品が並ぶ。最初に展示されているのが「宇宙大戦争」(1959年)や「怪獣大戦争」(1965年)に登場したロケット群。その「手作り」感こそが円谷作品にある「郷愁を誘う」と映画評論家の西村雄一郎さんは懐かしむ。

 展示は多彩で「モスラ」(1961年)の撮影で使われた“小美人”のミニチュア、「怪獣総進撃」(1968年)で使用された遠景撮影用のモスラの幼虫、「メカゴジラの逆襲」(1975年)で使用したメカゴジラ2の着ぐるみなどが並ぶ。「ゴジラ対メカゴジラ」(2002年)で水中撮影用として作られたゴジラ上半身スーツは水を使った撮影で酷使され、その後、腐食した痕が見られ、映画づくりの苦心が伝わってくる。

 展示の目玉となるのが、ゴジラの表皮に直接触って感触を確かめることができるコーナー。表皮は若狭さんの監修で、撮影で使われたゴジラスーツと同じ手法で作られており、“触れるゴジラ”の試みは佐賀会場が初めて。また、展示の最後に出てくるジオラマは5メートル四方の広さ。ゴジラのほか、頭上にレインボーモスラが舞い、まるで本物の特撮の現場にいるような雰囲気を味わえる。

 今回は、会場で展示物すべてを写真撮影できるのも大きな魅力(ただしストロボ、フラッシュは禁止)。フォトスポットも設けられ、年配の夫婦がゴジラの前で記念撮影している姿も見られる。日本が誇る怪獣造形の歴史を一堂に展覧した特撮のDNA展。ぜひ足を運び、夢を形にする造形師の仕事を堪能してほしい。(丸田康循)

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