懸念されていた事故が現実となった。沖縄県北部の東村高江で、米海兵隊の大型輸送ヘリコプターが米軍北部訓練場に近い民間地に緊急着陸し、炎上、大破した。

 現場は民家から約300メートルの地点だった。周辺住民に被害がなかったのは幸いだが、「もしも」という事態を想定せざるを得ない。

 日本政府は北部訓練場の約半分が昨年末に日本側に返還されたことを「沖縄の負担軽減」だと強調してきた。しかし返還と引き換えに建設されたのが、東村高江の集落を囲むような複数のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)だ。米軍機が頻繁に飛び、事故の懸念が指摘され、抗議の運動が続いてきた。

 沖縄では昨年末にも輸送機オスプレイが名護市沖で不時着、大破するなど米軍機の事故が相次いでいる。普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古の新基地でも事故の懸念は同じだ。小野寺五典防衛相も「特に米海兵隊の事故が続いている」と認めるような状態を「基地負担の軽減」と言えるのか。

 現場を視察した沖縄県の翁長雄志知事は「悲しく、悔しい」と語った。日本政府は、事故の原因究明と再発防止を米側に徹底して求めるとともに、まやかしではない負担軽減に向け、抜本的な取り組みを進めるべきだ。

 衆院選では各党が沖縄の負担軽減を公約に掲げ、在日米軍の法的地位などを定めた日米地位協定の見直しにも言及している。米軍機は日本中を飛んでおり、沖縄だけの問題ではない。全国的な課題として考えたい。

 事故を起こしたのは普天間所属のCH53E大型輸送ヘリで、2004年に普天間近くの沖縄国際大の構内に墜落したCH53Dの後継機だ。米軍によると、訓練飛行中に出火し緊急着陸、炎上したという。「墜落」と言うべき事案ではないか。

 北部訓練場は総面積約7500ヘクタールの半分超に当たる約4千ヘクタールが昨年末、日本側に返還された。安倍晋三首相は「沖縄の本土復帰後、最大の返還が実現した」と強調、「基地負担軽減に結果を出していく」と述べている。

 しかし返還の背景にあるのは基地機能の強化という実態だ。米海兵隊が13年にまとめた報告書「2025戦略展望」は、北部訓練場について「51%の使えない土地を返還し、残りは海兵隊が最大限利用できるよう開発される」と明記している。

 海兵隊の任務は変わり、装備も近代化している。ジャングル戦の演習に使っている森林地帯の訓練場の広い土地は不要となり、ヘリを使った演習地に機能を転換、強化したということだろう。

 辺野古に建設される基地も、普天間にはない護岸や弾薬搭載エリアが整備される。基地機能の強化ではないか。

 米軍の事故では日米地位協定によって日本側が事故原因の究明に関与できない可能性がある。米側の調査だけで飛行再開を認めていいのかが問われ続けている。

 翁長知事は地位協定の抜本的な改定を求め、県独自の案を9月に日米両政府に提出した。だが自民党の選挙公約は「地位協定はあるべき姿を目指す」と書くだけで、腰が引けた姿勢だと言わざるを得ない。希望の党は「見直しを求める」とし、日本維新の会や共産、社民両党は抜本改正に言及している。各党の「本気度」を見極めたい。(共同通信・川上高志)

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