最新刊の『宮本常一と「わたし」』(右)など三岳晉さんが手がけた本

最新刊の『宮本常一と「わたし」』(手前右)など三岳晉さんが手がけた本

 元銀行員で唐津の歴史を生かしたまちづくりに関わる三岳晉(みつたけすすむ)さん(73)が個人出版社「三岳出版社」を設立した。地方出版社がない唐津で、地域の歴史や文化に関連した本を出版したいと起業。「地元学」への情熱と金融のキャリアを糧に、本格的な編集出版活動を始めた。

 三岳さんは唐津市北波多出身で、福岡銀行退職後、唐津市の実家と福岡市の自宅を行き来しながら、旧大島邸の保存活用や建造物の文化遺産登録を進めるNPO「からつヘリテージ機構」の活動に関わってきた。

 「活動の忘備録」として2010年10月から毎月、A4判1枚の「からつたてもの応援団通信」を編集。15年4月、5年分の通信をまとめた「私家版」を10冊製本し、知人に配ったことが出版の第一歩だった。

 続いて自身の『四国遍路~ひとり歩き旅』を校正中の昨年4月、大腸がんが見つかった。治療で一時中断したが、「墓標として国立国会図書館に納めたい」と作業を継続。200冊発行したところ、遍路経験者らからの反響が大きく、国会図書館に収蔵されたことも出版への励みとなった。

 これを契機に本格的な出版活動に入り、知人の依頼を受け『宮本常一と「わたし」』を今年6月発行した。全国を旅し農漁村の文化に目を向けた民俗学者に魅せられた31人が寄稿した165ページ1300円(税別)の単行本で、800部発行し大手書店にも配本した。

 「売れなくてもともとと思っていたが、投下した費用を回収し、次につなげていく資金運用のめどがついた」と言う。次は念願の『九州の中の朝鮮―唐津編』(仮題)や自身の活動と結びついた唐津の登録文化財を紹介する本を構想する。

 銀行員生活で地域とのつながりはなかったという三岳さん。「本のおかげで多くの出会いができた」と語り、「(本を通して)過去を知るだけではなく、過去を生かした新しいまちづくりにつなげていきたい」と意気込む。

このエントリーをはてなブックマークに追加