佐賀県が初めて開いた競技・種目転向型トライアウト。フェンシングなどが紹介された=9月3日、県総合体育館

 2023年の佐賀国体・全国障害者スポーツ大会の成功を見据え、佐賀県競技力向上対策本部が県内の小学6年生から中学3年生までを対象に「競技・種目転向型トライアウト」を始めた。多種多様なスポーツの中から自分に適する競技を見つけてもらうとともに、6年後の大舞台で郷土の代表として活躍してくれる選手を発掘する狙い。強化育成策の柱の一つとして期待したい。

 「紹介したのは学校で普段接することが少ない競技ばかり。ホッケーのスティックやカヌーのパドルなど用具に触れ、興味津々の生徒もいたようです」。9月3日に開いた県内初のトライアウトについて県の担当者は「出合いの場」としての意義を強調する。

 トライアウトは契約解除されたプロ野球選手の合同選考会などを指す。文字通り新境地に挑む機会を提供する試みだ。今回、佐賀市、唐津市の2会場で紹介したのは水球、飛び込み、ホッケー、フェンシングなど14競技15種目。約50人の小中学生が参加し、おおむね好評だったようである。

 スポーツに限らず、技術習得などの面で幼少期から始めたほうが圧倒的に有利なのは間違いない。体操の内村航平選手が3歳から競技に熱中し、五輪の絶対王者となったのは好例だろう。一方、基礎体力などを養った後の転向で大きく飛躍した選手も少なくない。

 唐津商高出身の福本温子選手(トヨタ自動車)は高校2年の時にバレーボールからボートに転じてロンドン五輪日本代表に。中学で軟式テニスをしていた唐津西高出身の吉田雄悟選手も高校からセーリングを始めて五輪に出場した。女子ラグビー日本代表の堤ほの花選手(日体大)は陸上に没頭していたが、佐賀工高で新しい道を見つけた。今回のトライアウトに先輩として参加したが、自身の経験を伝えたいとの思いもあってのことだろう。

 1回目の佐賀国体は1976年。競技ごとに強化が進み、男女総合1位で天皇杯を獲得した。セーリングなどは県のお家芸と呼ばれるが、このとき活躍した選手や指導者が強化育成の土台を築き、競技者がそれほど多くない中で好成績を残し続けてきている。

 対策本部では全体会に続き、競技ごとのトライアウトを12月まで開いている。来年以降も継続して取り組みを定着させる考えだが、一定の配慮は必要だろう。競技の選択は児童生徒の希望に反したものであってはいけないし、競技間で将来有望な選手の奪い合いとなるのは本末転倒である。

 いま愛媛国体が開催中で、セーリング少年女子420級で優勝を飾るなど県勢の奮闘が続いている。国体まで6年。関係者の情熱と工夫で選手の強化育成を着実に前進させたい。(杉原孝幸)

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