独自の感性で無二の「青」を追い求めてきた。武雄市の青磁作家、中島宏さん(76)。自宅に柞(いす)の大木がある。イスノキとも呼ぶマンサク科の常緑樹だ。1969年に西川登町弓野に登り窯を開いた頃に移植した◆中島さんが「神木」のように崇(あが)め、思い入れは深い。柞を燃やした灰は陶磁器の釉(うわぐすり)の融剤に最良であり、混ぜて焼くと玉(ぎょく)のような純白の肌に化ける。青磁や、「濁(にごし)手(で)」と呼ばれる「柿右衛門」の乳白色の生地に欠かせない。合成の柞(いす)灰(ばい)では、この味わいは出ないらしい◆福岡三越で、中島さんの喜寿を記念した作陶展が開かれている(9日まで)。今なお進化を続ける作品と出合える。会場の演出も秀逸だ。入り口には柞が植え込まれており、作家の思いが伝わってくる。目を見張るのは直径50センチを超える大鉢。深い青をたたえ、光の具合でさまざまな色を放つ。「柞灰を使った新しい釉薬(ゆうやく)がうまくいった」と言う◆一角には自宅の床を模した設(しつら)えも。掛け軸の「而(じ)今(こん)」の文字が目に飛び込んでくる。「目下、ただいま」という意味のその言葉は、中島さんの心境と重なるそうだ。「今が永遠。明日は分からない。昨日のことを考えても進まない。今、打ち込むだけだ」◆中島さんには理想の「青」があり、まだ達してないという。そこに作家のあくなき挑戦心を見る思いがする。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加