自らを騎士と思い込み、風車に戦いを挑む男が主人公の『ドン・キホーテ』に、スペイン・バルセロナの光景が描かれている。「海は陽気にわき返り、陸はお祭り騒ぎ(略)大気は澄み渡ってすべての人びとに突然の喜びを産み出し掻かき立てるようである」◆400年前の物語だが、地中海に面した港街の活気が伝わってくる。そのバルセロナを擁するカタルーニャ自治州が、スペインからの独立へと突き進んでいる。住民投票では賛成が9割と圧倒的多数を占め、州政府のプチデモン首相が「独立国家になる権利を勝ち取った」と宣言した◆このカタルーニャ州の面積は3万2千平方キロで、沖縄を除いた九州7県(4万2千平方キロ)よりもずっと小さい。人口にしても700万人規模にすぎず、1300万人が暮らす九州の半分を上回る程度しかない◆一見、無謀とも思えるが、同州は独自の言語や文化を持つ、経済的にも豊かな地域で「搾取されている」という不満がくすぶる。これまでにも住民投票やデモが繰り返され、独立への機運が盛り上がっていた◆ドン・キホーテは決闘に敗れても「運命の女神なぞおらぬ。つまりそれぞれが己の幸運の作り手である」と潔い。民衆は自らの手で独立を勝ち取ろうと勢いづくが、阻止する構えの中央政府と激しくぶつかる。情熱の国が揺れている。(史)

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