衆議院が解散になった。10月10日公示、22日投開票に向けて、事実上の選挙戦に入った。なぜ今、解散なのか、説得力のある理由を見いだすことは難しいが、国民は政権選択の機会を手にしたことになる。

 今回は、未来に向けた日本の針路を定める選挙である。「安倍1強」体制の政権運営の是非が最大の争点になる。政策などをしっかり見極めたい。

 解散は首相や与党が最も有利とみるタイミングを選んで決断するもので、今回も安倍首相側の事情によるものだろう。核・ミサイル危機で北朝鮮情勢が緊迫する中、森友・加計(かけ)学園問題で政権の足並みが乱れ、その追及をかわす。何より野党の態勢が整わず、与党のまとまりを回復させ、求心力の復元を狙ったものといえよう。

 臨時国会の冒頭で解散したが、大きな理由もなく、開会を3カ月引き延ばした上、所信表明演説や質疑もなかった。今の内閣は8月に「仕事人内閣」として発足したのだから、その力量を見せるべく、せめて予算委員会ぐらいは開いてほしかった。

 ただ、ここにきて政治情勢は大きく動き、波乱含みだ。野党第1党の民進党が、新党「希望の党」と事実上、合流する見通しで、野党勢力の軸になりつつある。「安倍1強」に対し、有権者に異なる選択肢を提示できる野党の役割は重要である。とはいえ与野党とも、選挙戦略最優先の姿勢に終始しているのが、気がかりだ。

 離党者が相次いでいた民進党にすれば、人気の小池百合子氏が率いる希望の党と連携するしか道がなかったかもしれないが、理念、政策でどれだけ一致するのかが、最後まで問われる。政策そっちのけでの結集なら、有権者から「選挙互助会」との批判が来よう。

 自民党は消費増税の使途を変更し、国の借金返済から幼児教育の無償化などに振り向け、「全世代型社会保障」を目指すという。子育て世代には一定の理解が得られるだろうが、財政再建は遠のく。北朝鮮問題も「有事」といえるが、財政の危機も「静かなる有事」である。

 国・地方を合わせて1千兆円の借金を抱えている。日本の財政への信認がいつまで持つか、だれも分からないのではないか。

 希望の党は「改革保守」を掲げ、「しがらみのない政治」を目指すというが、イメージ先行の部分がある。民進党との絡みもあって流動的だが、自民党と対立する政策は「原発ゼロ」と「消費税の引き上げ凍結」だろう。原発ゼロへの道筋については、もっと詳しい説明が必要だし、消費増税をやらないなら、その代替案を示す必要がある。まだ、いろんな部分が生煮えの印象だ。

 安倍内閣は強引な運営が目立った。おごりや緩みを指摘されて、先の都議選では自民党が大敗した。希望の党が台風の目になりそうな今回の衆院選は、政権選択選挙の意味合いが増す。

 18歳選挙権になってから迎える最初の衆院選である。今の政権争いが、若者たちにはどう映っているだろうか。与野党は、若い人たちが将来を描ける国の形を示し、説得力のある政策論争に挑んでほしい。私たち有権者は、それぞれの主張を十分に吟味したい。(横尾章)

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