文化庁の2016年度国語に関する世論調査で、インターネットの会員制交流サイト(SNS)などで批判が集まる「炎上」を目撃した際、自分も書き込みや拡散を「すると思う」と答えた人は2・8%だったとの結果が出た。炎上イコール多数意見ではないという根拠を示すデータの一つとして注目している。

 ネットではしばしば、著名人や企業のSNSへの書き込みに対し「不謹慎だ」「謝罪しろ」とのコメントが殺到する現象が起こる。テレビのワイドショーなどがその書き込みのみを紹介したりするものだから、まるでそれが世間一般の声のように広まり、当事者はさらに集中砲火を浴びる。

 そうなったら最後、批判対象となった人や法人は、日本文化に深く根付く「謝罪」会見やコメントを出す以外、収束を図る手だてはなくなってしまう。

 しかし、今回の調査結果から浮かび上がったように、炎上は、実はごく少数の人が繰り返し書き込んでいるのが実態で、過剰に反応しすぎではないかという見方も持っておきたい。

 昨年発刊された『ネット炎上の研究』(勁草書房)は、2万人近くのネットモニターへのアンケートから炎上のメカニズムを定量的に分析した。炎上を知っている人はネットユーザーの90%以上いるものの、炎上への参加者はわずか1・1%。なおかつ、炎上に1度書き込んだことのある人は、2度以上書き込んだ人の半分以下という結果だった。つまり、わずか0・5%のヘビーユーザーが複数のアカウントを使ったり、何回も書き込んだりして、意図的に騒ぎを大きくしているだけという一端を数値で示した。

 同書は炎上を多角的に分析した上で対処法も指南。そのうちの一つに、炎上参加者は少ないことを知っておき、小さな炎上に過敏に反応して発信を控えるようになったり、すぐ謝罪対応をしたりする必要はないことを挙げ、冷静に対応するよう呼び掛けている。

 もちろん、ネットで「騒ぎ」になって初めて社会問題化し、改善につながったり、迷惑行為を自慢げに投稿したりして非難されても仕方がない人もいる。ただ、面白がって騒ぎに便乗したり、自分の正義のみを振りかざして攻撃をしたりするだけの人が増えたら、一般の人は批判を恐れて自由な発信を控えるようになるだろう。そうなると、ネットは極論のみが残る殺伐とした空間になるだけだ。

 先の文化庁調査で炎上に対する認識が「好ましい」と「どちらかといえば好ましい」が合わせて5%に対し、「どちらかといえば好ましくない」「好ましくない」が計77・6%と圧倒的に多かった。これは、対象者のプライバシーを暴いたり、人格攻撃にまで発展したりするネットの「過剰」な部分が可視化される「炎上」に対し、一般ユーザーが嫌悪感を示していることを雄弁に物語っている。

 ネットは社会正義を実現する武器にもなれば、人を傷つける凶器にもなる。ネットに書き込む前にそのコメントがどんな影響をもたらすのか、いったん立ち止まって考えよう。批判にさらされた側も炎上は大多数の意見ではない可能性も頭に置き、スルーすることも対応策の一つに加えて冷静な対処を心掛けたい。(森本貴彦)

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