市が設置した二酸化炭素(CO2)分離回収装置。排ガスからCO2を回収し、藻類培養企業に売却する=佐賀市清掃工場

■「未開の領域」に積極投資

 「燃料の多様化、多角化は望ましく、環境面でも好ましい」。2015年11月、佐賀市が主催した講演会。資源エネルギー庁の職員は、「資源」としての藻類とバイオマス事業を推進する佐賀市を持ち上げた。

■出馬理由

 食糧や燃料などさまざまな利用が見込まれる藻類は、石油などの化石燃料と異なる「培養できる資源」として注目を集める。市の事業は、北部の市清掃工場(高木瀬町)と南部の下水浄化センター(西与賀町)の2カ所で進んでおり、いずれも藻類培養企業との連携が成否の鍵を握る。

 清掃工場の目玉事業は、焼却場の排ガスから二酸化炭素(CO2)を分離回収し、企業に売却する。装置導入に約14億円投じた。下水浄化センターでは、総事業費37億円を見込んだ事業計画が進む。下水の処理過程で発生するメタンガスやCO2を使い、発電や藻類培養に利用する。

 6月14日の市議会一般質問。秀島敏行市長(75)は、引退するつもりで3期12年に臨んでいたことを認めた上で、4選出馬の意向を表明した。「まだまだ越えなければならないハードルがある。何としても産業化にめどをつけたい」。最大の理由がバイオマス事業だった。

 「回収して企業に供給できなかったCO2はどうしているのか」「空中放出しています」―。8月29日の市議会建設環境委員会。執行部の説明を聞いた市議たちは言葉を失った。

■先頭走者

 昨年8月に稼働した清掃工場のCO2分離回収事業の初年度販売額は24万円。目標の3%にとどまり、CO2のほとんどは空中に放出していた。「わざわざ税金を使って回収したCO2を放出していたとは…。税金を捨てているのと一緒だ」。市議の1人は理解に苦しむ。

 事業実績に対する情報公開請求に対し、非公開とした姿勢も信頼を揺るがせた。

 下水浄化センターでは、事業費の伸縮や、投資効果の再説明など、計画の不明瞭さが目立った。市の責任ではないが、国庫補助金の交付要件が新たに示されたことで、操業時期は3年遅れの24年度にずれ込む見通しだ。次期市長の任期中には操業しない計算になる。

 「ブルーオーシャン(青い海)」―。事業の意義を説明する際、市担当者はしばしばこの経済用語を用いる。「競合のいない『未開の領域』だからこそ好機がある」ことを意味する。事業は、低炭素社会を目指す環境政策であると同時に、産業集積や雇用創出を目的とした経済政策でもある。「先頭走者」であることのリスクと利点は表裏一体をなしている。

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