木枯らしが舞う季節になると、「あいたたた…」と体の痛みに悩まされませんか? 冬場は気温の低下が引き金となって、腰やひざ、古傷など体のあちこちに痛みが出やすくなります。痛みが慢性化して、なかなか治らないのであれば、「漢方」を活用するのも一手です。西洋医学と東洋医学の双方を生かした治療を行う「漢方の専門医」馬島英明先生に聞きました。

■「痛み」は体への警告信号 

 日本古来の医学である「漢方」は近年、その有効性が見直されています。がんや認知症、更年期障害、高血圧をはじめとする現代病のケアに幅広く活用。さらに「痛み」の治療でも、漢方への期待が高まりつつあるのです。

 そもそも、私たちが日常で感じる痛みには、けがや打撲などによる炎症のほか、頭痛、歯痛、腹痛、神経痛、生理痛など、さまざまな種類があります。また、実際に損傷がある場合だけでなく、生活環境やストレスなどによって痛みが増強され、長引くこともあります。いずれにせよ、痛みは“体への警告信号” 。痛みがあるからこそ、人は心身の不具合に気づき、自分を守るための対処ができるのです。

 西洋医学では、痛みの原因物質を抑える鎮痛剤などを用い、「対症療法」を行うのが一般的です。とりわけ急性の場合は、現代医薬の方が効き目も早いでしょう。しかし、痛みが慢性的になったり、薬の副作用で胃弱になったりしたら、漢方の出番です。

■漢方から見る「痛み」とは? 

 漢方では痛みについても、漢方独自の理論「気・血・水」に基づいて考えます。「気」は生命エネルギー、「血」は全身に栄養を届ける血液、「水」は体内の水分です。この3つの要素が正常に循環していれば健康ですが、逆にいずれかが不足したり、流れが滞ったりすると、痛みを引き起こします。まずは「気・血・水」のバランスを整え、全身の巡りを良くすることで、痛みを取り除こうとするのが漢方の考え方です。

 さらに「五行論」に基づいて、体を「木(肝)・火(心)・土(胃)・金(肺)・水(腎)」に分類(図参照)。互いの機能を助け合う「相生(そうせい)」、抑制しあう「相剋」という関係性をもとに診断・治療を行います。

■一人ひとりに合う漢方薬をオーダーメード

 それでは痛みに対して、どのような漢方が有効でしょうか。

「腰痛」を例にとると、代表的なのは、足腰や泌尿器の衰えを改善する「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」。腰痛で冷えもあるなら、血行を促す「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」。ひざ・足に痛みを伴うなら、血行と水分循環を促す「疎経活血湯(そせいかっけつとう)」などがあります。

 このように腰だけでなく、冷えや疲れ、貧血、便秘、肥満など全身の訴えを知り、改善しながら腰の痛みを緩和するのが漢方です。ほかにも腰痛に対応する漢方薬は数多くあり、組み合わせて処方することが可能です。漢方が“究極のオーダーメード薬”といわれる所以です。

 現在は約150種類の漢方薬が保険適用となっていて、経済的負担も少なくなっています。

■信頼できる「漢方専門医」に相談を 

 当院では患者さんと直接お会いし、「四診」(望診・聞診・問診・切診)を行った上で、一人ひとりの体質や症状を見極め、季節なども考慮しながら処方を決めていきます。したがって電話での相談は受け付けません。服薬歴や病歴が分かる「おくすり手帳」を持参してください。サプリや健康食品などの利用歴もあるといいでしょう。 漢方薬は天然の生薬からできているので、体にやさしいイメージがありますが、服用を間違えると副作用もあります。また、生薬そのものにも重要な副作用があります。「麻黄(まおう)」「黄芩(おうごん)」「甘草(かんぞう)」「人参(にんじん)」「山梔子(さんしし)」などを含む方剤は注意を要します。自己判断はせず、知識と経験が豊富な「漢方専門医」に必ず相談しましょう。

■土を中心とした五行図

 

相生…木を焼けば火が生じ、燃えた後の灰は土に還り、土の中から採れた金属に熱が加わると溶けて水になり、木に水を与えれば生育する、というようにお互いの機能を助け合う作用についての考え方。

相剋…火に水をかければ消え、金属は熱くなりすぎると溶けてなくなり、木は金属(斧など)で切り落とされ、木は大きくなると土の栄養分を吸い取り、土を高く積めば水をせき止めるなどお互いを抑制し合う作用のこと。

 

 

馬島医院 院長

 

馬島 英明

ましま ひであき 東京医科大学卒業。1982年、佐賀医科大学外科学、消化器一般外科入局。87年、佐賀医科大学外科学助手。91年、医学博士取得。同大学消化器一般外科医局長を経て、94年1月に馬島医院を開業。日本外科学会認定医。2006年12月、社団法人日本東洋医学会漢方専門医試験に合格。西洋医学と東洋医学を取り入れた医療を実施し、毎年学会で発表。本年度も4回の発表を行う予定。

 
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