男女合わせた部位別がん罹患率の第1位は大腸がん、第2位胃がん、第3位が肺がんです。ところが部位別がん死亡率では、大腸がん、胃がんを抜いて肺がんがトップ(男性1位、女性2位)です。4人に1人、70歳を超えれば2人に1人ががんで死亡する時代で、肺がんはがんの中で「生涯累積死亡リスク(一生のうちにある病気で死亡する確立)」が最も高いというデータもあります※。そんな肺がんの特徴や治療について、ひらまつ病院の加藤雅人院長に聞きました。 (※データは国立がんセンターがん対策情報センターと日本対がん協会から)

■生物学的悪性度が高く進行早い

 

 がんの進行度は1期~4期の4段階で示します。大腸がんや胃がん、乳がんは1期(初期)で見つかれば95%の生存率ですが、肺がんは70~80%です。初期症状はなく、見つかりにくいうえに進行が早く、気が付いた時には4期になっていた場合もあります。ビー玉サイズ(直径約1センチ)の初期で見つかった人でも全身に転移しているケースが多々あり、肺がんは生物学的に悪性度が高く、初期でも油断ができないがんなのです。

■早期発見にはCT画像診断が有効

 喫煙者は50代から非喫煙者は60代から肺がん検診でCT画像診断検査をおすすめします。CT検査は5ミリのがんを見つけることが可能で、胸部エックス線画像に比べると発見率は約30倍高くなります。被ばく線量は胸部エックス線より高いですが、年1回検査する分には問題ありません。

■手術は胸腔鏡下手術で体の負担少なく

 

 当院では肺がんや肺疾患の手術はほぼ全例、胸腔鏡下手術(内視鏡下手術)です。胸部の3~5カ所に5~10ミリの小さな穴を空けて器具を挿入し、九州で初めて導入したハイビジョンを超える高解像度4Kカメラで確認しながら、より緻密で安全な手術が可能です。傷も小さく、肋骨を切ることなく、肺機能はしっかり残してがんを切除できますから患者さんの負担は少なく、約1週間で退院できます。

■肺がんに効く抗がん剤「分子標的薬」

 肺がんの治療を進めるときは遺伝子検査も行います。遺伝子変異が「陽性」の肺がんの患者さんには、最近開発された健康保険適用の抗がん剤「分子標的薬」が良く効くことが分かっています。肺がん患者の6割が進行して手術が難しい状況にありますが、そういう場合でも分子標的薬を使えば改善します。ただ陽性反応が出るのは非喫煙者に多く約6割、喫煙者は1割しかいません。「たばこを吸わないのに肺がんになった」という人もいますが、その要因は、喫煙者の周囲に流れる副流煙の受動喫煙によるものです。同じ肺がんでも非喫煙者は比較的治りやすく、喫煙者の肺がんは治りにくいのが現状で、厄介です。手術、抗がん剤治療、放射線治療など、患者が自分の望む治療ができる時代にはなりましたが、まず、肺がんの治癒率を高めるためにも、禁煙の大切さを知ってください。

■喫煙者増え女性の罹患率アップ

 男性に多いと思われがちな肺がんですが、女性は喫煙者が昔に比べて多くなったことから、肺がんも増加傾向にあります。また、初潮が早く閉経が遅いなどで女性ホルモンを分泌する期間が長いと肺腺がんになりやすいともいわれています。

 肺がんは1度かかったら、新たながんが次々とできてくることがあります。手術から5年経ったからといって安心はできません。それからが大事です。生きている限りがんのリスクがあると考えて、がん検診を受けて早期発見、早期治療に努めましょう。当院も、がんの治療を行う病院として、だれもが安心して治療が受けられるように地域を支えていきます。

【Memo】喫煙のリスク

 たばこを吸う人は吸わない人に比べ、肺がんを発症するリスクが5倍です。PM2.5など大気汚染の影響も積み重なって、肺の細胞は傷ついています。喫煙も肺の細胞を傷つける行為と同じで、ほかの循環器系の病気になる確率も高くなります。周囲の人へ配慮しながら、できるだけ禁煙に努めましょう。

ひらまつ病院 院長

 

加藤 雅人

かとう・まさと 1979年、鹿児島大学医学部卒後、九州大学医学部第一外科入局。九州労災病院、国家公務員共済組合連合会浜の町病院などを経て、2009年に浜の町病院外科部長、胸部外科部長。16年から現職。日本外科学会専門医・指導医、日本呼吸器外科学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本胸部外科学会認定医、日本乳癌学会認定医

 
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