女性がかかるがんの中で最も多い乳がん。12人に1人が発症するといわれています。乳がんは治療方法がしっかりと確立していることから、死亡率は低いのが特徴です。しかし、生活環境や食生活の変化で、罹患者は増加傾向にあり、発がんのピークは30歳代後半と若年化が進んでいます。早期発見すれば95%の確率で治るという乳がんについて、発症原因や自己触診の大切さなど、今村病院(鳥栖市)の岸川圭嗣副院長・外科部長に聞きました。

■早期がんの目安は直径2センチ以下

 人の体には毎日100個ほどのがん細胞ができます。その中で生き残ったがん細胞が10年ほどかけて徐々に大きくなったものが早期がんです。早期がんが2~3年で進行がんに変化すると、進行が急に速くなり、がん細胞は等比級数的に大きくなります。これは平均的なもので、約20種類ある乳がんの中には悪性度が高く、数カ月で一気に大きくなるタイプもあるので注意が必要です。

 それでも乳がんは他のがんと比較すると治りやすいがんで、早期発見であれば95%がほぼ完治します。その早期がんと進行がんの分かれ目は、がん細胞のしこりが直径2センチ以下かどうかです。乳腺の中に留まっている超早期がんは極めて小さいので、触っても分かりませんが、2センチのしこりは自己触診でほとんどの女性が気づくと思います。この段階で見つかると「手遅れ」を防ぐことができますから、自己触診は月1回、生理が終わったあとにぜひ習慣づけてください。

■定期検診だけでは万全ではない

 年1回、定期的に乳がん検診を受けている人の中で、しこり2センチ以上の進行がんが見つかる割合は10%と高い確率です。1年の間に急に進行がんに変わってしまうことがあるのです。定期検診では何もなかったから大丈夫ではなく、自己触診で先月と何かが違うと感じたら、すぐに専門外来を受診してください。

 授乳中の方はお乳の色をチェックし、血液が混じっていたら要注意です。ただ、母乳を通して、赤ちゃんにがんが移ることはないので安心してください。

 

■抗がん剤が有効な乳がん治療

 乳房の温存は女性には大きな要素です。特に乳首の温存には大きな意味があり、できるだけ温存できるように治療を進めます。方法は、まず手術前に抗がん剤を使い、がん細胞を小さくします。分子標的治療薬など抗がん剤の効果は高く、8割の方のがん細胞が小さくなり、そのうち2割はがん細胞が見えなくなるほどです。進行がんも同様に、手術前にできるだけがんを小さくして、温存の可能性を探ります。

■40歳代はマンモグラフィーとエコー検査の併用を

 乳がん検診はマンモグラフィーが基本です。マンモグラフィーは乳がんも乳腺も同じように白く映り、がんを見落とす場合があるので乳腺が発達した若い女性には不向きです。年齢を追うごとに乳腺は脂肪に変わり黒く映るので、小さいがんの発見がしやすくなります。40歳代の方にはエコー検査との併用、もしくはマンモグラフィーとエコー検査を1年ごとに交互に行うことをおすすめします。当院ではマンモグラフィーの最新機器「トモシンセシス」(保険未収載)を備えています。1回の撮影で連続した断層写真が得られるので、精度の高い診断ができます。マンモグラフィー読影認定資格を持つ専門家が画像を解読していきます。

■初潮から初産までの期間が長いと若年代の発症高い

 乳がんの発症には、女性ホルモンのエストロゲンが深くかかわっています。初潮が早く、閉経が遅い、妊娠や出産の経験がない方は発症のリスクは高くなります。母乳を出したことがない乳腺が女性ホルモンに接する期間が長いと発症のリスクが高くなるからです。特に初潮から初産までの期間が長い方は若年代での発症が高くなります。

 遺伝性もあります。祖母や姉妹など自分の2親等内の親族に乳がんを発症した人がいる人はリスクが高いことを知っておけば早期発見につなげることができます。

 更年期障害などでホルモン療法を行う場合は、乳がんの発症の可能性もありますから、乳がん検診は半年に1回受けましょう。半面、乳がんに使う薬剤が子宮体がんの発症を高める場合がありますから、婦人科との連携も大切です。また、男性にも186分の1の確率で乳がんが発症します。乳がんは自分で発見することができるがんです。「手遅れ」にならないように自己触診、定期検診を行い、気になることがあれば気軽に乳腺外来を受診してください。

医療法人社団 如水会 今村病院

 

外科部長/副院長・院長代行

岸川 圭嗣 (きしかわ けいじ)

1987年佐賀医科大学(現佐賀大学医学部)を卒業後、九州大学医学部附属病院第2外科、Mt SinaiMedical Center fellow、県立病院がんセンター医長などを経て現職。日本外科学会、日本消化器外科学会、日本移植学会、日本乳癌検診学会などに所属。マンモグラフィー読影指導医などを務める。

 

 

 

 

 

○医師紹介

 

今村 一郎 (いまむら いちろう)

理事長・院長 専門分野/消化器外科、肝胆膵外科、乳腺外科

 

 

 

 

原 征史朗 (はら せいしろう)

救急部長 専門分野/一般外科、消化器外科

 
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