〈白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり〉。宮崎に生まれ、明治から昭和初期に活躍した歌人、若山牧水の一首である。酒をこよなく愛した牧水には、それにまつわる多くの歌があるが、これは代表歌◆若い頃からの大酒豪で、40歳の時に九州を旅し、連日酒を飲んで1日平均2升5合という記録を残す。「酒仙の歌人」ともいわれた人だが、元来、一人静かにしみじみと酌む酒を好んだのは歌の通りだ◆これから仕込みの季節となる日本酒。各地の人気酒蔵と、フランスの地方にある名レストランとをつなげ、日本酒の輸出量を伸ばす仕掛けを東京の企業が進めている。今のところは12道県の酒で、その中に佐賀の酒蔵もある。海外でも高まる日本酒人気。昨年の総輸出額は155億円だが、フランス向けは2億円弱にすぎず、のびしろがありそうだ◆大都市の和食店に限らず、地方のフランス料理店でも受け入れられれば、ぐんと市場が広がる。同国初の日本酒品評会で、佐賀の酒は多くの賞に輝き、高い評価を受けたばかり。フランス人好みのフルーティーで洗練されたタイプも登場し、売り込みの好機である◆「日本酒の日」のきょう、佐賀県産の酒で乾杯するイベントが開かれる。県内の至る所で杯が傾けられ、会話も弾み、秋の夜長が楽しまれることだろう。(章)

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