右手に皿を乗せ、角度を変えながら、左手の筆を動かす。「自分にあったやり方を工夫することが大切」と話す=有田町の深川製磁

趣味は食べ歩き。器がどう使われているかみることを楽しみにしている

右手に皿を乗せ、角度を変えながら、左手の筆を動かす。「自分にあったやり方を工夫することが大切」と話す=有田町の深川製磁

 右手に乗せた皿を小刻みに動かしながら、左手に持った筆を繊細に動かす。「左利きだからね。字は右手で書くけど、絵の微妙な部分は左手でないとうまく出せない」。左右の手を自在に連係させ、絵柄を仕上げていく。

 焼き物の図柄は右手で描くことが前提になっているものが多いという。職場の机も、右の手元を明るくするため、左側に大きな窓がある。「明かりは机に蛍光灯があるからいいけど、左手では、左から右へ真っすぐな線を引くことも難しい」。なんとか左手で描こうと編み出したのが、右手で皿の角度を少しずつ変えていく現在のスタイル。「どんな仕事でも同じだろうけど、自分がやりやすいように工夫することが大切」と話す。

 職場では皿や花瓶の下絵付けのほか、中国・明代の図柄を生かし、光沢のある仕上がりにする「明染付」にも当たる。20年以上前に、退職した先輩から引き継ぎ、ずっと一人で担当してきた。特別な絵の具を使うため、筆につける量や描く順番まで気を使う。

 担当を命じられたときは「自分にできるか」と不安もあった。それでも若手時代にベテラン職人から言われた「分からなかったら一人で悩んでないで聞け。それから自分のやり方を考えろ」という言葉を糧に、基本を教えてもらいながら取り組んだ。

 絵を描くときには、筆を入れるときに「とん」とアクセントをつけることを大切にする。葉脈を描くときも「魚の骨のように真っすぐではだめ」という。「風になびくように柔らかく、線の太細、強弱のバランスを考える」ことで生きた絵、雰囲気のある絵になると力を込める。

 新人時代に何度も書き直しを命じられ、基本をたたき込まれたことが「今生きている」と痛感する。ただ「いつまでたっても『これで完璧』ということはない。もっとうまく描きたいと思ってしまう」とも。向上心と工夫を忘れず、仕事と向き合い続ける。

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