秘めた過去の犯罪を知られるのを恐れ、罪を重ねる。内田吐夢(とむ)がメガホンをとった映画「飢餓海峡」(1964年)は、主人公の犯人を演じた三國連太郎と、追う刑事に扮(ふん)した伴淳三郎、主人公を慕う娼婦役の左幸子の名演技が映画史に残る◆台風で青函連絡船が転覆、どさくさに乗じて津軽海峡を犯人が小船で渡る―。これが展開の鍵に。下敷きになったのが、実際に起きた青函連絡船「洞爺丸(とうやまる)」の事故だ。54(昭和29)年、台風の暴風雨と猛烈な波浪で函館港内に沈んだ◆計5隻が遭難し、犠牲者は1430人。当時の佐賀新聞も、英国客船タイタニック号沈没事故に匹敵すると報じた。洞爺丸遭難は63年前の9月26日で、きょうは「台風襲来の日」。58年に「狩野川(かのがわ)台風」が伊豆・関東地方を襲い、59年に「伊勢湾台風」が東海地方に上陸し大惨事となったのも、全てがこの日だったのである◆風の恐ろしさを思い知るばかりだが、先週からビュービュー吹いた「解散風」も突然だった。安倍首相が衆院解散を表明した。国会冒頭での解散は、現憲法下では4回目。過去3回はいずれも自民党が勝っている◆首相は綿密にソロバンを弾いて吹かせた風だろうが、吉と出るか凶と出るか―。今度は世論という風が相手になる。この荒っぽい舵(かじ)取りが、日本丸の行く手にどう影響するだろう。(章)

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