詩人の長田弘さんが、渋柿の柔らかな熟柿(じゅくし)を絶品のデザートにできることを知ったのは、韓国ソウルでだった。秋になると、ホンシ(紅柿)と呼ばれる見事に熟した柿が一斉に街に出回る◆薄い皮をそっとむいて、丸のまま冷凍する。カチカチのをレンジで半解凍し、スプーンですくって食べるのだそうだ。「柿シャーベットこそ、ソウルの澄んだ秋の天上の味」と随筆に書いている。ごくりと生つばをのみ込んだ◆そろそろ日本でも柿の季節。国産の生柿の米国向け輸出が解禁されるという。年内にも出荷が始まる和歌山などの産地は、待ち遠しいことだろう。今もタイと香港などが主な行き先で海を渡るが、米国へは病害虫を防ぐ検疫が不十分とされ許されなかった◆日本原産ともいわれる柿の生産量は、中国や韓国の方が勝っている。海外に打って出ることで、農家の意欲の源となるはずだ。武雄市では、種なしの渋柿「刀根早生(とねわせ)柿」と「平核無(ひらたねなし)柿」を収穫後に、炭酸ガスで渋を抜いたものの出荷が、来月から国内向けに始まる◆この柿の上質のものだけを、枝に残したまま完熟させるブランド柿「武雄温泉美人」は、その甘さから関東でも人気が高まっている。生で食してもよし、シャーベットにしてもよし。秋の恵みを存分に味わいたい。〈日あたりや熟柿の如き心地あり〉夏目漱石。(章)

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