新しい年の幕が開いた。清々(すがすが)しい気に満ち、寒さに身が引き締まる。花時を迎えた寒水仙(かんすいせん)は厳寒をものともせず、花茎をすっと伸ばし佇(たたず)む。立ち姿は気高く、楚々(そそ)とした花からは馥郁(ふくいく)たる香りが漂う。ほっと陽(ひ)の温かみも感じさせてくれるところに、この1年の希望を見る◆<去年今年(こぞことし)貫く棒の如(ごと)きもの>。正岡子規に師事した俳人の高浜虚子が、過去と現在、未来という時間の連続性を詠んだ句である。新年の本質を鋭く突いた名吟として知られている◆去年今年は、時間の迅速なめぐりを言う季語。虚子にとっては時が移り変わっても、棒のように貫いているものがあるというのである。この棒を「天地自然の摂理」とする見方もあるが、ここは俳句への信念とみてもいい◆この句は1950(昭和25)年12月20日、NHKラジオの新春放送用に作ったという。敗戦から5年後のこの年、朝鮮戦争が勃発し、占領下の日本には「特需」が起こる。逆風から、一転、追い風が経済に吹いた年だった。このめまぐるしい時代の変化にあっても、虚子の俳句への強い思いは揺らがない◆だれしも自分の中に、一本貫くものを持っていることだろう。それを大切にしつつ、新しい年にこれまでにない挑戦もしたいもの。先の見えにくい混迷の時代だからこそ、背筋をすっと伸ばし、今を見据えたい。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加