東松浦郡玄海町の岸本英雄町長が玄海原発3、4号機の再稼働に同意する考えを九州電力に伝えた。立地自治体が正式に同意表明したことで、再稼働に向けたステップがまた一つ進む。しかし、県内には反対意見も根強い。「地元同意」の責任を負う山口祥義知事は全ての自治体の声を聞いた上で慎重に判断する必要がある。

 岸本町長は記者団に「住民代表の町議会の判断を重く受け止め、政府の方針を理解する判断をした」と述べた。先月末に玄海町議会が「安全対策の議論は尽くされた」と多数決で再稼働を容認している。町議会の結論を町民の声と判断した。

 玄海町、そして、隣接する唐津市では、多くの住民が原発や関連企業で働いている。また、再稼働すれば、13カ月に1度の定期検査で2千人前後の宿泊や飲食需要が見込まれる。雇用や経済効果があり、地理的に原発に近いほど再稼働を望む声が多いのも事実だ。

 行政からすれば、電源立地地域対策交付金や固定資産税など税収に関わる話でもある。住民サービスの維持という観点からも、これ以上の先延ばしは避けたいというのが玄海町の本音であり、「国が安全性にお墨付きを与えるのならば、すぐにでも再稼働を」というスタンスとなったのだろう。

 とはいえ、誰もが6年前の福島第1原発事故を目の当たりにしたはずだ。「原発事故は絶対に起きない」という安全神話は否定されている。住民は被ばくせずに逃げることができるのか、避難計画を丁寧に検証する必要がある。

 鹿児島県の川内原発1、2号機が先に稼働しており、玄海原発の再稼働も問題はないという見方もあるかもしれない。

 ただ、川内原発は薩摩川内市の中心から離れた西端にあり、事故時にすぐに避難が必要な5キロ圏の人口は玄海原発の方が多い。また、呼子や名護屋などの観光地や離島があり、避難誘導の難しさを考えれば、川内原発以上の具体的な計画を示さないと、いざという時に住民を救えない。

 一昨年夏、再稼働直前の川内原発周辺を取材したが、隣接するいちき串木野市は、市内全地区に3ルートずつの避難道路を示した原子力防災ガイドブックを全戸配布している。市独自で作成したもので、避難者が道を間違えないように通過する全ての交差点を記す手の入れようだ。不安視する住民の声に応えるような取り組みを県内でも求めたい。

 今回は立地自治体の同意だが、原発再稼働はすべての県民に関わる問題だと改めて認識したい。重大事故が起これば、玄海、唐津、伊万里の計3市町の18万8千人が避難するが、受け入れ先は残る県内17市町だ。体制づくりを進めるためにも、県内すべての自治体から再稼働についての理解を得ることが必要だ。

 山口知事は18日に県内20市町の首長の意見を聞く。県議会はこれを受け、来月以降に判断するという。4月に臨時議会を開く案もあるというが、それでは「再稼働ありき」の日程となる。県内世論を二分する問題であり、定例議会で議論を尽くすべきだろう。

 まもなく6年目の「3・11」を迎える。これまで重ねた議論を踏まえ、県民が納得のいく答えを出したい。(日高勉)

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