その発想のヒントになったのは、吉野家の牛丼だった。経営危機に陥ったヤマト運輸の当時の社長、小倉昌男さんが自著で回想している。何でも運べるトラック会社よりも、吉野家のように思い切ってメニューを絞り、個人の小荷物しか扱わない会社の方が可能性があると考えた。それが「クロネコヤマトの宅急便」である◆多角化よりもたった一つのサービスに-。まさに逆転の発想だった。郵便小包の独占市場であり、民間がやらないのはそれなりの理由がある。当初は全役員が反対した。「主婦は運賃を値切らず、現金で払ってくれる」。説得してスタートしたのが41年前◆それが大成功したことはご存じの通りだが、いまヤマト運輸が揺れている。労働組合が春闘の交渉で、宅配便の荷受量の抑制という異例の要望を出した。「人手不足と長時間労働はもう限界」というのである◆ネット通販の急拡大が背景にあり、不在による再配達が疲弊を増幅している。とうとう27年ぶりに基本運賃を全面的に値上げする検討に入った。小倉さんも想定外の事態だろう◆誰もが使うサービスだ。なくなれば私たちも困る。米国や中国の大手宅配業者は再配達コストを利用者から徴収している。確実に受け取れる日時に配達指定をするなど、みんなが少しずつ歩みよる。できることがあるように思う。(章)

このエントリーをはてなブックマークに追加