慢性心不全患者の血圧などを遠隔でチェックする際に使う通信機能付きの体重計を持つ野出孝一教授=佐賀大学医学部

■患者在宅時で実証実験

 佐賀大学医学部と佐賀県内の8医療機関は1月から、ICT(情報通信)機器を活用し、慢性心不全患者の血圧や脈拍などを在宅のまま遠隔でチェックするシステムの実証実験を始める。病状の悪化を早期に察知して適切な対応を取り、再入院回数の減少や医療費の軽減につなげる。心疾患を県域レベルで在宅管理するための大規模実験は全国初で、2018年度末までにシステムを構築する。

 慢性心不全は、高血圧などが原因で心臓機能が低下する病気。入院患者の約3割が退院後1年以内に再入院するなど再発率が高い。平均在院日数は約30日に及び、別の心疾患の約10日と比べて長い。中には60日以上にわたって入院するケースもあり、医療費を押し上げる一因にもなっている。

 心不全治療は通常、規則的な服薬に加え、塩分や水分のコントロール、運動などが必要になる。しかし、退院して自宅に帰ると、服薬を忘れたり運動を怠ったりするケースが多く、再入院してしまう。このため、体重や血圧の数値をICT機器で病院に送信し、適切な治療や指導を実施する。

 実験は、心不全の入院歴がある20歳以上が対象で、約60人が参加する予定。通信機能が付いた体重計と血圧計を患者宅に設置し、体重、血圧、脈拍の3項目を毎日測定する。データは医学部臨床研究センターにリアルタイムで送信される。主治医や看護師らがチェックし、数値に異常があった場合、服薬や運動の指導に加え、受診を呼び掛ける。

 自宅での適切な管理が可能になるため、急性期後の回復期にこれまで入院が必要だった治療を自宅に移すことができ、入院日数の短縮も見込めるという。

 実験には県医療センター好生館など8医療機関に加え、旭化成(本社・東京)も参加して遠隔管理システムを構築する。

 事業費は5859万円で、県が助成する。同様の実験を18年度以降、九州や全国規模に広げる計画もある。

 担当する佐賀大医学部循環器内科の野出孝一教授(55)は「再入院する患者をまずは3割減らし、最終的には半減させたい。健康寿命を延ばすことにもつながるはずで、患者が安心して自宅で過ごせる手助けをしたい」と意欲を見せている。

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