未明からの濃霧で交通機関が混乱し、困惑したUターンの帰省客も多かったろう。今年の国内経済も米大統領選でトランプ氏が予想外の勝利を収めたことで、見通しがきかない五里霧中の状態から始まるというところだろうか。

 昨年の株式相場は乱高下を続けた。年始に1万9千円近かった日経平均株価は1万5千円切るまで下落し、そのまま低迷が続くかと思われたところで、トランプ氏の勝利で上昇相場に転じた。年末の終値は1996年以来、20年ぶりの高値だった。アベノミクスの限界がささやかれ始めただけに、一番安堵したのは安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁ではないか。

 昨夏の参院選は与党が圧勝したが、経済政策には批判が噴出した。景気刺激策のマイナス金利は金融機関の経営に悪影響を及ぼし、公的年金の株式運用も大幅な損失を出して裏目に出た。それだけに、円安株高の“トランプ相場”で国内経済は息を吹き返した。

 とはいえ、安倍政権にとって目の前の株価対策が経済政策のゴールではないだろう。これから続く少子高齢化社会に持続可能な経済システムを構築するのが長期政権の責任だ。アベノミクスという大胆な金融緩和による景気刺激策は、社会構造改革のための時間稼ぎに過ぎない。

 安倍首相が政権の座に復帰してから4年が過ぎた。「民主党政権時代よりはいい」という弁明に固執するのは、もういい。目の前の景況感に一喜一憂するより、長期的な視野に立った経済政策で成果を示してほしい。

 首相は独自色を打ち出そうと、「一億総活躍社会」と「働き方改革」の担当大臣をつくった。女性が子育てしながら働ける社会づくりを進めるべきだし、男性も“仕事人間”に美学を求める発想を改め、家事や育児に協力することが必要だ。そういう社会の抜本的な改革を進める一年としたい。

 広告最大手の電通で、新入社員の高橋まつりさんが休日もないような連日の深夜残業と、職場のパワハラ的な雰囲気に追い詰められ過労自殺した。表面化しないだけで、似たような企業は少なくないだろう。高橋さんの悲劇を繰り返さないためにも、スピード感を持った改革が必要だ。

 昨年は三菱自動車の燃費データ改ざん問題も発覚した。企業内の利益を優先するゆがんだ滅私奉公は、電通の長時間労働にも通ずるところがある。何より消費者への裏切り行為だろう。トップが先頭に立って、悪弊をなくしていかなければならない。

 一方で、トランプ相場の恩恵はいつまで続くか分からない。トランプ氏が選挙公約である国内産業の保護を最優先すれば、「ドル安」誘導へかじを切る可能性は大きい。円高になれば、日本国内の輸出企業の利益は吹き飛ぶ。

 また、石油輸出国機構(OPEC)が原油安に歯止めをかけようと原油減産に合意し、ロシアも同調の方針を示している。長期的には原油高と、それに伴う物価高への引き金となるかもしれない。

 ただでさえ、東京五輪に向けた開発などで建設資材や人手不足による人件費の高騰が起きている。物価上昇が行き過ぎれば、国民生活だけでなく財政をも圧迫する。景気刺激策一辺倒からの修正が今後は問われてくる。(日高勉)

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