勝負事にご利益があるという「勝守」。巫女(みこ)さんの顔ほどもある大きいサイズもある

境内には、和装で散策を楽しむタイ人の姿もある。タイ語を学んでいる鍋島朝寿権宮司(中央)がもてなす=鹿島市の祐徳稲荷神社

 海外から日本を訪れる観光客が増え、地方で余暇を過ごす姿も目立ってきた。佐賀新聞社とデーリー東北新聞社(青森県八戸市)、山陰中央新報社(島根県松江市)の友好3紙による新春恒例の合同企画は今年、「インバウンド」をテーマに、訪日客を引き寄せようと熱を帯びる3県での動きを追った。

 神社の境内で、「ほほ笑みの国」からの観光客が歓談していた。「サワディカップ(こんにちは)」。日本三大稲荷の一つに数えられる鹿島市の祐徳稲荷神社では近年、タイ人の姿が目立つようになった。「人数は日々異なるけれど、全く訪れない日はないですね」。鍋島朝寿権宮司(49)は、観光スポットとしての定着ぶりを喜ぶ。

 神社には高さ18メートルの本殿があり、年間約300万人が訪れ、中国など東アジアからの観光客も多い。県フィルムコミッションがタイ映画やドラマのロケ誘致に取り組み、映画「タイムライン」(2014年)やドラマ「きもの秘伝」(15年)のロケ地になると、ヒットと相まってタイ人が急増した。境内に飾られた絵馬の願いがほとんどタイ語になった時期もあった。

 リピーターもいる。パチャラパさん(39)は12月、2度目の観光を楽しんだ。「佐賀の中でも、タイ人に最も受けているのはドラマの舞台になったこの神社。前回はツツジが咲く4月に来たけれど、季節が違うと見どころも変わる」

 観光庁の統計によると、タイ人観光客の佐賀県内への宿泊者数は2013年に延べ370人だったが、14年は1540人、15年は4590人と急増し、高い伸び率を見せている。

 神社は、海外客のおもてなしに力を入れる。おみくじは、できるだけ母国語で読んでもらえるように、英語やタイ語など6カ国・地域の言葉に翻訳した国際版がある。有明海を眺望できる奥の院の社は塗り替え、くつろいで過ごせるようにベンチ数を増やした。

 地域も刺激を受けている。隣接する門前商店街の店舗は、ドラマ「きもの秘伝」の人気にあやかり、観光客向けに着物の着付けや写真撮影のサービスを始めた。まだ多くはないが、タイをはじめ、中国や台湾の観光客の利用があるという。

 「着物を着て、抹茶などの日本の伝統文化を体験するイベントも企画できたら」。スタッフの賀村智恵さん(52)はこう話し、さらなる誘客への期待を膨らませている。

■勝守(かちまもり)

 お守りの種類が豊富な祐徳稲荷神社には、スポーツなど勝負事に御利益があるという「勝守」がある。約30年前に誕生し、通常サイズ(1個800円)に加え、チームや団体で共有できる巨大な勝守(5000円)がある。

 巨大な勝守は長さ約25センチ、横約16センチ。鍋島朝寿権宮司は「お守りが大きいと、勝利への意識も大きくなってくる。スポーツも仕事も勝負は1回きりじゃない。日常から自身を鼓舞し、心の支えとして使ってもらえたら」と話している。

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