2020年夏の東京五輪・パラリンピックに向け、国からオランダ、フィジー、ニュージーランドのホストタウンに登録された佐賀県と嬉野市が、事前合宿の誘致に本腰を入れている。見据えているのは参加選手と地域住民の末永い交流。相手国の文化なども学び、県民の国際交流や地域振興を進める好機にしたい。

 「県民の国際交流という視点からすれば、またとないチャンス」。県国際課の担当者はホストタウンとしての交流が多文化共生社会に向けた礎になると強調する。

 ホストタウンは2016年1月の第1次登録から徐々に増え、昨年12月の第3次登録時点で186自治体。国のホームページに登録自治体と相手国が掲載されているが、それぞれスポーツや文化交流などでつながりのあるところを選び、申請したことが分かる。

 では、なぜ佐賀県はこの3カ国なのか。オランダは空手や女子野球の合宿のほか、有田焼創業400年に合わせた磁器の共同開発で以前から交流がある。フィジーは昨年のリオ五輪ラグビー7人制で活躍した佐賀市在住の副島亀里ララボウラティアナラ選手の母国。ニュージーランドとも陸上競技の合宿で親交があり、早い段階から白羽の矢を立てていたようである。

 県は相手国との絆を強めたいと動き始めている。山口祥義知事らがフィジーを訪問し、県内の子ども10人が青少年交流事業でオランダへ。今月21、22日にはフィジー大使館の書記官を招き、県内の小中高校で異文化理解の講座を開く。相手国から競技団体の視察も相次いでおり、県は反応の良さに手応えを感じているようである。

 現時点で五輪出場時の事前合宿が決まっているのは空手のオランダ代表だけだが、今夏にはユニバーシアード競技大会前のニュージーランド陸上代表の合宿が内定しており、県スポーツ課は「実績を積み重ね、一つでも多く誘致できるようにしたい」と語る。

 これから順調に事前合宿が決まっていけば、受け入れの枠組みも広げる計画。「少なくとも事前合宿を受け入れる市町には参画を促したい」(県国際課)というが、草の根交流の盛り上げを図るためにはこれも欠かせないだろう。

 1月に開かれた国と九州のホストタウンとの意見交換会で、丸川珠代五輪担当相は前回1964年の東京五輪で新幹線などのハード整備が進み、高度経済成長のきっかけとなったのに対し、今回の大会はパラリンピック選手らとの交流も含め、共生社会に向けた意識改革こそがレガシー(遺産)になるとの考えを示したという。

 日本は少子高齢化が進行。人手不足などを背景に外国人労働者が増加しているほか、国の観光戦略もあって訪日外国人が急増している現実もある。この流れは都市部に限らず、地方においても顕著になっている。

 交流が実を結べば、五輪後の2023年の開催となる佐賀国体に向けた競技力向上をはじめ、文化、経済、福祉などさまざまな分野への波及効果が期待できる。関係者が口をそろえて言うようにホストタウンの取り組みを一過性で終わらせることなく、末永く関係を保つことが大切だ。世界の友人たちとの交流を豊かな地域づくりにつなげたい。(杉原孝幸)

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