<3月の風に想いをのせて 桜のつぼみは春へとつづきます> ロックバンド「レミオロメン」の2004年のヒット曲「3月9日」は、卒業式の定番ソング。この季節になるとラジオでよく流れる◆6年前の3月9日は、三陸沖で震度5弱の地震があった。その激しい揺れは、2日後の予兆だったか。2万人以上が犠牲になった東日本大震災の被災地では、私たちの生きる世界と冥界の境があいまいになったかのような、不思議な話が語られている◆東北学院大学の学生たちによる調査をまとめた『呼び覚まされる霊性の震災学』(新曜社)には、宮城県石巻市のタクシードライバーたちの証言が収められている。真夏なのにマフラー姿の小学生の女の子を乗せたドライバー。迷子だと思って家まで送ると「おじちゃん、ありがとう」。すっと消えた◆ダッフルコート姿の青年は「彼女は元気だろうか?」という言葉と、リボンの付いた小箱を座席に残す。30歳代の女性は、津波に流され更地になった土地へ向かうよう頼んで消えた。それらは「無賃乗車」として処理されるが、どの証言も死者を悼む気持ちにあふれる◆冒頭の曲は<瞳を閉じれば あなたが まぶたのうらにいることで どれほど強くなれたでしょう>と歌う。亡き人の面影を重ねる被災者も少なくないだろう。あの日が近い。(史)

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