先月、佐賀でも上映されたドキュメンタリー映画「海は燃えている」。命がけで地中海を渡る難民と、小さな島の住民という二つの日常を対比させ、静かに難民問題を問いかける◆イタリア最南端の島。人口約5千人に対し、押し寄せるアフリカや中東からの難民は年5万人だ。「ほとんどが女と子ども。どうか助けてください、沈没しそうなの」「救助しますから落ち着いてください」-。警備の無線の声が切ない。彼らを受け入れるか拒むかは、欧州の切実な問題であることを浮き彫りにする◆難民の行き先の一つ、フランスでも大統領選の主要テーマだった。難民・移民へのリベラルな姿勢を訴えた親EU(欧州連合)のマクロン氏が勝利した。国民は「極右だけは避けたい」と考えたのだろう◆英国のEU離脱やトランプ米大統領という「自国第一主義」の流れを何とか止めた形である。連邦議会選が9月に迫るドイツは胸をなでおろしたはずだ。くだんの映画は世界が分断されつつある今を描いた。命の危険から逃れてきた難民・移民たちまでが、「テロの温床」とあらぬ攻撃をされる事態をどう収めればいいのか◆昨年の難民認定申請者約1万人に対し、認められたのは28人と極端に少ない日本。もう場当たり的な政策では解決できないところへたどり着きつつある。問い続けたい。(章)

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