伊勢神宮の参拝に向かう安倍首相と民進党の蓮舫代表=4日、三重県伊勢市

 安倍晋三首相は年頭記者会見で、今年の干支(えと)にちなんで過去の酉(とり)年の衆院解散・総選挙を列挙し「しばしば政治の大きな転換点となった」と意味深に言及した。高い内閣支持率や堅調な株式市場の追い風を受け、野党をけん制する意図が透けて見える。党勢低迷が続く民進党は巻き返しを狙うが、「安倍1強」体制を崩す効果的な戦略はなかなか見当たらない。【共同】

■余裕

 「12年前、あの劇的な郵政解散があった。さらに12年前は、私が初当選し、自民党が戦後初めて野党になり、『55年体制』が崩壊した歴史的な年だ」

 首相は会見冒頭、記者から質問される前に自らこれまでの「酉年選挙」を紹介。「佐藤栄作首相(当時)が沖縄返還で米国と合意し、解散・総選挙に打って出た1969年も酉年だった」と続け、酉年は政治決戦の年と印象付けてみせた。

 ただ、記者団から衆院解散・総選挙の時期を問われると、今度は「平成29(2017)年。今日で4日目だが、解散の2文字を全く考えたことはない。いま質問されて初めて『解散』という言葉が脳裏に浮かんだ」と混ぜっ返し、笑いを誘う余裕さえ漂わせた。

 経済最優先で17年度予算の早期成立に取り組む考えを強調しながら、「今は」とも付け加え、解散のフリーハンドを確保するしたたかさも感じさせる。

■揺さぶり

 今年の政治スケジュールを眺めると、春から夏にかけ、天皇陛下の退位を巡る特別法案の審議、衆院小選挙区の「1票の格差」是正を反映した新たな区割り案勧告、東京都議選など大きな政治課題が続く。

 このため政界では「解散は秋以降」(自民党幹部)との観測が出ているが、そうした見方に偏らないようにするだけでなく、解散権をちらつかせて求心力をさらに高める戦略を取っているようにも受け取れる。

 4日の東京株式市場の日経平均株価終値は、大発会としては1996年以来の高値となり、首相は追い風を受ける。昨年末の日ロ首脳会談や米ハワイ真珠湾訪問など外交を進め、内閣支持率は50%台と好調を維持する。「安倍1強」を加速させる首相は、解散に浮足立つ野党の姿を見ながら、じっくり解散時期を判断する構えだ。

 首相は天皇陛下の退位を巡る法整備に関しても「政争の具にしない良識」が求められると指摘し野党への揺さぶりを徹底している。

■水中

 民進党にとっては、党勢回復の足掛かりをつかめるか正念場の年となる。蓮舫代表は4日の会見で「今年は必ず総選挙がある。攻める年にしたい」と訴えた。

 高い知名度と発信力を武器に昨年9月に代表に就いたが、党支持率は1桁台と低迷。掛け声とは裏腹に、衆院選に向けた野党共闘の調整は遅れが目立つ。野田佳彦幹事長は仕事始め式で「背水の陣ではなく、既に水中に沈んでいる」と党の厳しい現状を認めた。

 もがく蓮舫氏が期待を掛けるのが「FOR NEXT」(次世代のために)と題した新キャンペーンだ。女性や子育て政策の課題を掘り下げ、政策提案につなげる。「こわもての安倍政権との違い」(党関係者)をアピールする狙いだ。党幹部は蓮舫氏について語る。「悩み、迷っているのは事実。でも『選挙の顔』は彼女しかいない」

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