「ブラックモンブラン」超えを目指して開発した氷菓「つぶみかん」。竹下真由社長は「挑戦する姿勢が社員、会社を成長させる」と話す=小城市の竹下製菓

宗政酒造が県産麦芽100%で仕込んだ地ビール「NOMAMBA(のまんば)」

茶の実から抽出したオイルを配合したスキンケアクリームをアピールする緑門の湯浅宏一取締役=嬉野市嬉野町

 これからの時代、どうすればヒット商品を生み出せるのか-。消費者の好みや価値観が多様化する中、佐賀県を拠点にする企業の多くが、これまでにない商品やサービスを生み出そうと知恵を絞っている。キーワードの一つは「地産地消」。地元の原材料などにこだわり、ことしさらに人気を集めそうな3社のアイデア商品を紹介する。

=竹下製菓(小城市)= 氷菓 つぶみかん

■国産温州の果肉たっぷり

 竹下製菓(小城市)が昨年3月に発売した氷菓「つぶみかん」が好評だ。酷暑となった昨夏は売り上げ全体の15%を占め、早くも氷菓で一番の人気商品になった。年間2千万本を売り上げるアイス「ブラックモンブラン」には及ばないが、竹下真由社長(35)は「新しいものを生み出す力が、会社を成長させる」と力を込める。

 「つぶみかん」は糖度の高いミカンをそのまま凍らせたような濃厚な味わいが特徴。国産温州ミカンの果肉が原材料の45%を占めるため原価は高いが、「手ごろな値段でおいしさを届けたい」と、他の商品並みの1本130円に価格設定している。

 果肉を多く使う分、その出来次第で味が左右されるため、開発は試行錯誤の連続となった。原材料を安定的に調達するため、複数のメーカーを使い分けせざるを得ず、地域や季節によって異なる味を一定に保てるようになるまでに2年余りを要したという。

 年間数百種類の新商品が生まれては消えていくアイスの世界。主要取引先の一つ、コンビニの冷凍ケースで年間を通して扱われるのはごくわずかだ。同社の商品では、祖父で先々代社長の故・小太郎さんが焼き菓子の需要が落ちる「夏枯れ対策」として1969年に発売し、ロングセラーとなっているブラックモンブランしかない。

 「知名度のない商品は、他社より確実においしくなければ見向きもされない」と竹下社長。

 売り上げで2、3番手の「ミルクック」「トラキチ」も発売から30~40年。「祖父が築いた屋台骨のおかげで失敗を恐れずに挑戦できる」。88歳で亡くなるまで商品開発に力を注いだ祖父の背中を追うように、次なるロングセラーを狙っている。

=宗政酒造(有田町)= 地ビール NOMAMBA

■県産麦芽100%で香り高く

 焼酎「のんのこ」で知られる宗政酒造(西松浦郡有田町、宗政寛社長)が、昨年10月に完成させた地ビール「NOMAMBA(のまんば)」。佐賀県産二条大麦を原料とする「のんのこ」を手本に、県産麦芽100%で仕込み、香り高くすっきりした味わいに仕上げている。

 佐賀らしいビールをつくるプロジェクトの第1弾。栃木県の麦芽メーカーの協力を受け、県産のビール用大麦「サチホゴールデン」を加工した。国内で最も普及しているピルスナータイプで、透き通った黄金色が目を引く。

 昨年10~11月に開かれた熱気球世界選手権の会場やイベントで販売したところ人気は上々で、仕込んだ千リットルを売り切った。樽詰めだけの販売で、佐賀市のビールバー「B-POINT」や、有田ポーセリンパークのレストランで提供中。今年夏には瓶詰め商品を発売する予定だ。

 同社は1998年にビール製造免許を取得。ニュージーランドで技術研修を受け、ラガー、黒ビールなど3種類の瓶詰め商品を製造してきた。ただ、しばらくして地ビール人気が終息すると、低価格の発泡酒ブームもあって販売量は伸び悩んできたという。

 一方、県産原料を使った焼酎の売り上げは好調を維持しており、ビール事業も同じ方向性で進めることを決めた。最近、地ビール人気は全国で再燃中で、工場長を務める和田真司常務(56)は「日本一の大麦産地だからできた商品。今度こそ、愛されるご当地ビールに育て上げたい」と意気込む。

 苦みと香り、泡持ちに欠かせないホップも佐賀市の山間地で少し栽培されているといい、利用できないか検討中。「オール佐賀産に挑戦したい」と夢を膨らませている。

=緑門(研究所・嬉野市)= 茶の実オイル

■高い保湿力で肌をケア

 国産和紅茶の卸販売などを手掛け、嬉野市に研究所を構える「緑門」(本社・千葉県)が新規事業で開発したスキンケアクリームが脚光を浴びている。原料はこれまで廃棄されていた「茶の実」。事業の新規性が評価され、佐賀県ベンチャー交流ネットワークが主催したビジネスコンテストで最優秀賞を獲得している。

 発案したのは下山田力社長。お茶の仕入れで嬉野を訪れた際、直径1センチほどの茶の実が茶畑に無数に捨てられているのを目にした。茶葉の生育を良くするため、茶の実は刈り込んで捨てていると聞き、有効活用したいと思い立った。

 研究機関に成分の分析を依頼すると、驚きの結果が返ってきた。茶の実のオイルには抗酸化作用の高いビタミンEがゴマ油の約80倍で、肌を守るオレイン酸も多く含まれ、乾燥肌を防ぎ、保湿力を維持する効果があることが分かった。

 下山田社長の子どもがアトピー性皮膚炎で、「低刺激で肌に優しいものをつくりたい」という思いも事業を後押しした。茶畑に囲まれた嬉野市不動山に研究所を構え、離農や高齢化により耕作放棄地になっていた茶畑から実を買い取り、試作をスタートさせた。

 最初、茶の実のオイルは体積の約1%しか搾り採ることができなかった。ただ、粉砕方法や搾り布の材質を変えるなどさまざまに工夫し、体積の約10%まで搾れるようになったという。

 オイルには独特の香りがあり、化粧品産業の集積を目指すジャパン・コスメティックセンター(唐津市)の助成を受け、無添加・無香料で全身ケアに使えるクリームを開発した。伸びが良く、すっきりと肌になじむのが特長という。同社は「お茶の新しい可能性を追求し、全国に発信していきたい」と意気込んでいる。

このエントリーをはてなブックマークに追加