衆院予算委で民進党の長妻昭氏(左端)の質問に答弁する安倍首相=8日午後

3日、憲法改正を訴える会合に寄せられた安倍首相のビデオメッセージ=東京都千代田区

 安倍晋三首相(自民党総裁)は8日、憲法9条改正を提起してから初の国会論戦に臨んだ。普段の質疑と同様に強気の姿勢を前面に出しつつ、首相と党総裁の立場を使い分けて踏み込んだ質疑は回避した。「安倍1強」体制の自民党は唐突な提案に戸惑いながらも、強い異論が出る雰囲気はない。民進党は首相の姿勢に反発し、対決姿勢を示そうと気負うが、改憲へのスタンスが定まらないため効果的に攻め込むことができないでいる。【共同】

 「この場には首相として立っている」。首相は8日の衆院予算委員会で、改憲を提起した真意をただす民進党の長妻昭元厚生労働相の質問をまともに取り合わなかった。

■「読売新聞を熟読して」

 長妻氏が、自衛隊を国防軍と位置付けた2012年の自民党改憲草案は取り下げるのかと追及すると、首相は「党総裁としての考え方は読売新聞に書いてある。それを熟読していただきたい」と答弁。国会軽視とも受け取られかねない発言に、場内からは「そんなばかなことはない」とやじが飛び交い、浜田靖一委員長も「不適切なので気を付けていただきたい」と首相をたしなめた。

 それでも首相は強硬姿勢を崩さず、改憲草案がそのまま通るとは考えていないと主張。「どこも自分の考え通りにはならない。長妻さんね、政治っていうのは自分の考え通りにはならないんです」と開き直るような場面も見られた。

 首相が3日に発信した改憲方針について、自民党幹部は「全く知らされていなかった」と打ち明ける。船田元・憲法改正推進本部長代行はメールマガジンで首相に慎重な対応を求めたものの、党内で表立った批判はほとんど聞かれない。

■首相の意を忖度

 むしろ「首相は来年の通常国会中の発議を念頭に置いている」(党関係者)と首相の意を忖度(そんたく)し、調整を急ごうとする空気すら漂う。「首相の発言は国会で積み重ねてきた与野党間の信頼関係をこじれさせた。あり得ない」(国会筋)との不満の声は「強い首相」の下、勢いを欠いている。

 民進党は、首相が打ち出した9条改正案について、衆参両院の憲法審査会で扱わない構えだ。背景には「党内は護憲派と改憲派が混在し、本当に改憲が必要かどうかで意見が割れる」(ベテラン議員)との事情がある。

 8日の予算委では、質問に立った民進党議員5人のうち、首相の改憲案に触れたのは長妻氏だけ。それも本格的な議論には深入りせず、首相の基本的な姿勢を追及するにとどまった。

 前原誠司元外相は昨秋の代表選で首相と同じ9条改正を主張。細野豪志元環境相も改憲私案で自衛隊の位置付けを検討するよう提言している。強引に意見集約を進めれば、党分裂を招きかねない。中堅議員は「自民党が首相案でまとまったらまずい」と身構えた。

=最前線=

このエントリーをはてなブックマークに追加