新聞記者を主人公にした小説と、その作者。左から堂場瞬一さん、本城雅人さん、塩田武士さんのコラージュ

■推理や業界もの「進行役に最適」

 新聞記者を主人公にした小説が脚光を浴びている。元記者の作家が経験を生かしていることに加え、物語を進める探偵役として記者が適任という、執筆上の都合もある。新聞社の厳しい経営に光を当てる企業小説も登場。「クライマーズ・ハイ」で知られる横山秀夫さん(60)に続く「記者小説」の担い手は誰か。

 山田風太郎賞を昨年受賞し、今年の本屋大賞でも3位に入った塩田武士さん(38)の「罪の声」は、事件取材が苦手だった文化部記者が30年以上前の未解決事件に挑む。グリコ森永事件を下敷きに、ドキュメンタリータッチで描く構成が話題となり、累計16万部と好評だ。

 塩田さんは元神戸新聞記者。「事件取材に向いておらず、記者時代はずっともがいていたが、辞めた今は、調べる喜びと書く喜びの両方感じている」。そんな自身の変化が、等身大の記者像に結実した。担当編集者は「新聞社の苦境が伝えられる中、遠い存在だった記者が、より身近に感じられるようになったのではないか」と推測する。

 「ミッドナイト・ジャーナル」で4月に吉川英治文学新人賞を受けた本城雅人さん(51)も産経新聞とサンケイスポーツの記者を経て作家になった。誘拐事件での誤報の責任を取り地方を転々としていた記者が、7年越しで事件に迫る物語だ。

 元読売新聞記者で、警察小説に定評のある堂場瞬一さん(53)によれば、警察官を主人公にすると、部署や担当地域の壁があり、作中で自由に動かしにくいという。「その点、記者は何にでも首を突っ込んでいいことになっていて、探偵役として非常に使いやすい」

 難点もある。「記者が警察より早く真相にたどり着くのは、現実的ではない」。だからクライマックスを盛り上げるのに苦労する。堂場さんの新作「犬の報酬」では、主人公は自動運転技術に絡む事故の情報をいち早く聞きつけて特ダネを放ち、取材競争をリードする。リアルに経過する物語の終盤は、事故の背景に迫りきれない記者のもどかしさにも光を当てる。

 昨年10~12月には、本城さんの「紙の城」と堂場さんの「社長室の冬」が相次ぎ刊行された。「紙の城」はITベンチャーによる新聞社買収の阻止に奔走する記者の姿を描き、「社長室の冬」も身売りの計画に揺れる新聞社内を活写。読者の新聞離れに苦しむ業界に迫る小説だが、堂場さんによると、反響はやや鈍い。

 「私たちは新聞には意味があり、注目されて当たり前と思っているが、それは自意識過剰。世間はそれほど関心がない」と苦笑する。ただ、メディアの激変は追い掛けがいのあるテーマ。「(業界の)10年後がどうなるか楽しみだし、書くことはまだある」。小説の主人公として記者が活躍する余地も、ありそうだ。【共同】

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