東京電力福島第1原発事故の発生から、あすで6年となる。川内や伊方など新規制基準を合格し、再稼働した原発がある一方で、福島の事故現場では溶け落ちた核燃料(デブリ)の回収のめどが立たず、事故の収束はほど遠い。この1年で、核燃料サイクルの中核施設となる高速増殖炉の廃炉方針や、原子炉メーカーでもある名門企業東芝の経営危機も明らかになり、原発を取り巻く環境は厳しさを増している。

 東電は福島第1原発2号機の内部を調査するために、カメラや線量計を搭載した自走式ロボットを投入したが、炉心直下にたどり着く前に立ち往生した。強い放射線のためか、カメラの映像にも不具合が出ている。

 放射線量は最大毎時650シーベルトと推定される。人命を短時間で奪う強さであり、機械での作業も困難なほどだ。30年前に事故が起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発は今もデブリの撤去はできていないが、福島も相当な長期戦を覚悟すべきなのだろう。

 廃炉作業の難航に加え、農業被害や住民生活への賠償金、広域的に拡散した放射性物質の除染など事故処理費用は青天井に増え続ける。現在の試算で総額21兆5千億円だ。事故を起こした東京電力だけで負担はできず、国は電気料金に上乗せして、国民に負担を求めるスキームを検討している。

 事故の総括さえ十分にできていないのに、負担論先行のやり方に違和感を覚える人は多いだろう。東電は費用捻出を理由に、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を急ぐが、昨年10月の知事選は再稼働慎重派の新人が勝利した。安全性への地元の不安は大きいと言える。

 原発推進論の一番の根拠だった「安い電力」も揺れている。欧米では風力や太陽光など再生可能エネルギーの活用が急拡大している。原発と比べ、発電コストが低くなってきたからだ。「脱原発」は安全性から語られることが多いが、経済現象としての「原発離れ」が見え始めている。

 福島の事故後、世界的に安全対策の強化が求められ、建設費が上昇した。東芝は買収した米国企業が原発新設で多額の損失を抱えていることがわかり、その負債で存亡の危機に直面している。世界最大の原発メーカーのフランス・アレバも経営難に陥っている。

 日本政府は国内メーカーのために新興国への原発輸出を後押しするが、リスクは大丈夫か。現地でトラブルが起きれば、経営のダメージが計り知れないのは、東芝のケースを見ても明らかだ。

 発電コストの安さは、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルを前提としているためでもある。しかし、研究用の高速増殖炉「もんじゅ」がほとんど稼働実績を残すことができないまま、廃炉になることが決まった。

 本来なら再利用計画を断念し、最終処分場建設を急ぐべきだろうが、住民の反発を危惧してか、候補地の名前を出すところまでも至っていない。福島の事故後も問題の先送り体質は変わらない。

 原発が電力を安定供給し、この国の豊かさに寄与したことは評価すべきだろう。しかし、「3・11」後、その経済性が揺らいでいる。事故から6年、課題を直視し、原発政策が進むべき方向性を真剣に考えたい。(日高勉)

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