「高齢者」が75歳からになると、どうなるのか-。日本老年学会などの5日の提言に対し、現状で高齢とされている世代からは「いくつになっても働ける社会にしてほしい」と好意的に受け止める声が相次いだ。一方で、識者からは年金や医療費削減を懸念し「定年延長への期待は甘い」との意見も出た。【共同】

 タレントで俳優の毒蝮三太夫さん(80)は「昔の70代はおじいさんやおばあさんに見えたが、今はまだまだ若い。提言はその通りだと実感する。健康寿命を上げて、元気でチャーミングなお年寄りがもっと増えればいい」と前向きに評価する。定年延長の動きにもつながることを望んでいる。

 「若者の道が開けないとの見方もあるが、能力のある年寄りから教わることは多い。定年が早いと認知症にも悪影響がある。社会保障費が抑制されれば、国にとってもありがたいはずだ」

 東京都北区で従業員5人の印刷所を営む中村輝雄社長(73)も、高齢者が活躍する機会が増えることを期待する。従業員の最高齢はアルバイトとして働く80歳の男性。中村さんは「重い物は持てないが、できる範囲で、いつまでも仕事をしてもらいたい」と願った。

 東京・新橋で友人と待ち合わせをしていた千葉県鎌ケ谷市の無職男性(72)は、64歳で会社を定年退職。「仕事はやり切った」と言うが、「意欲のある人が働けるのは良いことだ。体を動かす仕事は若者にかなわないが、経理などの専門分野の知識がある人は、何歳になっても能力を生かせると思う」と強調した。

 一方、「悪影響が非常に心配」との見方をしたのは、ジャーナリスト田原総一朗さん(82)。「定年延長への期待は甘いと思う。長く働けるようになっても、企業は新しい契約を結び、給与を抑えようとするだろう。提言は一見、正しいように見えるが、年金の支給が先延ばしになったり、医療費が抑制されたりする可能性もある」と指摘した。

■世界では「60~65歳以上」

 医療の発達や衛生環境の改善に伴って高齢化は世界的に進み、世界保健機関(WHO)によると、2015年の世界全体の平均寿命は00年から約5歳延び71・4歳だった。一方、国際機関や各国の「高齢者」の概念は60歳以上や65歳以上が一般的。平均寿命世界トップの日本が高齢者を75歳以上と定義すれば、世界的な先行例となりそうだ。

 WHOは高齢者の定義について「多くの先進国では、定年となる60歳か65歳が高齢者の始まりとみなされている」と指摘。米政府は65歳以上を「高齢者」とした統計を多く発表している。

 15年の日本の平均寿命は83・7歳で、20年以上連続で首位。一方、栄養状態が悪いサハラ砂漠以南のアフリカでは平均寿命が依然60歳に満たない国が多い。最も短いシエラレオネは50・1歳だ。

 ただ、死亡率の低下などにより、途上国を含む過半数の国は70歳を超えている。若年層の縮小や健康な高齢者層の増大に伴い、日本を含む先進国では60歳代半ばから後半への年金支給開始年齢の段階的引き上げが続く。欧米では年齢を理由とした強制退職を禁じている国も多い。

 日本では定年延長や継続雇用制度の導入が進むものの、60歳定年制の企業が依然多い。日本の高齢化対応は、欧米に比べ進んでいるとは言い難いのが実情だ。

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