政府が、米軍の新型輸送機オスプレイの空中給油訓練再開を容認したのは「日本外交と防衛の基軸」(政府高官)と位置付ける日米同盟の維持を優先しているからだ。予測不能な発言を繰り返すトランプ次期米大統領の就任を20日に控え、関係自治体や住民の理解を後回しにしてでも米国へ配慮する姿勢が透ける。軍備増強を続ける中国への強い警戒感も背景にある。【共同】

 欧州訪問中の稲田朋美防衛相は5日、訓練再開の容認に関し「米軍オスプレイの給油能力維持は、わが国の防衛や緊急対応の観点から重要だ」とのコメントを発表した。

 視線の先にあるのは、中国への強硬姿勢を盛んに発信し、同盟国にも軍事費の負担増を求めるトランプ氏の存在だ。

 兵員輸送を担うオスプレイの行動半径は約600キロ。沖縄本島から尖閣諸島までを十分にカバーできるばかりか、1回の空中給油で行動半径は約1100キロに延び、台湾や東シナ海全域が米軍の作戦範囲に収まる。

 昨年末、空母を西太平洋で初航行させた中国にとっては「海兵隊員を乗せ長距離移動ができるオスプレイの存在は大きな抑止力になる」(防衛省筋)という事情がある。

 安倍晋三首相は強固な日米同盟の維持をトランプ氏と早期に確認したい意向だ。しかし、事故から1カ月も経過せず、原因が最終的に特定されていない中での訓練再開に対し、関係自治体が不満と不安を募らせるのは間違いない。

=政府説明の要旨=

 米軍新型輸送機オスプレイの空中給油訓練再開に関する防衛省の説明と、稲田朋美防衛相のコメント要旨は次の通り。

 【冒頭】

 防衛省は事故要因にどのようなものがあり得るか、米側の対策が有効か、米側と協議を重ねた結果、安全に空中給油を実施する準備が整ったと考える。

 【事故状況と原因】

 昨年12月13日、空中給油が終了し、オスプレイの給油管と給油機の給油ホースを分離させた後、ホースとオスプレイの右プロペラが接触、ブレード(羽根)が破損した。

 米側の確認では、搭載システム、機械系統および機体構造に問題は発見されず、原因はホースとプロペラが接触したことにあると評価される。

 【接触要因と対策】

 米側は人的および環境要因の可能性を精査している。人的要因には搭乗員間の意思疎通などが含まれ、環境要因には風や乱気流などが考えられる。

 米側は空中給油機とオスプレイの搭乗員全員に、手順の確認、地上シミュレーターを使った空中給油訓練を実施した。搭乗員全員が必要な教育・訓練を通じ習熟したことを確認して飛行日程を組む。オスプレイを運用する海兵隊と、給油機を運用する空軍が相互に連携して安全に活動できるよう再確認する。パイロットや搭乗員の経験と教訓を共有する。

 【防衛省の評価】

 米側は接触を引き起こした可能性があると指摘された要因に対し、有効であると思われる対策を幅広く取っていると考えられる。安全確保が大前提だが、空中給油の重要性を理解する。

 【防衛相コメント】

 現時点で原因を完全に特定するには至っていない。接触は強風、乱気流といった条件下で任務が行われていた環境要因のほか、人的要因も複合的に重なり発生した可能性があることは、米側と見解が一致した。

 事故原因となり得る要因を網羅する再発防止策を全て実施したことを確認した。防衛省の専門的知見と経験に照らしても妥当だ。米軍は今後とも空中給油訓練は陸地上空では実施しないことも確認している。

 オスプレイ配備は日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、アジア太平洋地域の安定にも資する。オスプレイが任務を効率的に果たす上で空中給油は極めて重要だ。空中給油は訓練を継続的に実施しなければ技能を維持できない。

 運用上のニーズも勘案すれば、安全対策が有効であることが確認できたので、防衛省としては6日に空中給油が再開されることを理解する。地元に原因と安全対策を丁寧に説明し理解を求める。

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