高年齢者の雇用に積極的な企業は、定年制見直しを若手社員への技術継承につなげている=佐賀市内

■経験活用、人手不足解消に

 日本老年学会が現在65歳以上としている高齢者の定義を75歳以上に見直し、65~74歳を准高齢者と位置付け、働き手として捉え直すよう提言する中、仮に定義が見直された場合、60歳定年制を採用している佐賀県内の企業の約6割が、定年を延長する考えを持っていることが、佐賀新聞社の調査で分かった。人手不足解消につながることなどをメリットに挙げている。

 調査は1月中~下旬、県内企業200社に実施し、102社(51%)から回答を得た。回答企業のうち3割は既に定年延長を実施しており、7割が60歳定年制をとっている。

 60歳定年制の企業のうち、仮に定義が見直された場合、定年延長に踏み切ると答えたのは59・7%。延長幅については「65歳に延長」が26・9%で最も多く、「年金制度に連動」が11・9%、「66~74歳に延長」が1・5%だった。

 定義見直しのメリット(複数回答)は「シニアの経験、知識が生かせる」が69・7%でトップ。「人手不足解消」(56・1%)、「教育や技術継承、指導体制強化」(43・9%)、「優秀な人材の引き留め」(42・4%)、「経験者を低賃金で雇える」(34・8%)と続いた。

 一方、見直しのデメリット(同)は「若者の採用抑制や給与削減」が59・4%、「組織のモチベーション低下」が57・8%と半数を超えた。「人件費の増加」(43・8%)、「将来性、成長性の低下」(42・2%)、「ポストが空かない」(39・1%)とする声も目立っている。

■見直し「賛成」34% 組織の活力低下懸念も

 今回の調査では、高齢者の定義見直しの提言について「賛成」と答えた企業が34・3%で、「反対」とする企業の6・9%を大きく上回った。

 「いまは60歳定年だが、定義が見直されれば年金制度に連動させる」。現在5人を再雇用して人手不足を補っている佐賀市の旅館の担当者は「シニアの経験を若い人に伝えてほしい」と期待を込める。

 若手の確保が進まず、定年を66歳に引き上げた佐賀市のタクシー会社は「ドライバー不足は今後も続きそう。66~74歳までの定年延長を労働組合に申し入れ、協議したい」と前向きに語る。「知的能力に問題はなく技術職の定年を70歳まで引き上げたい」(機械メーカー)との声もあった。

 一方、働き手として65~74歳を厳しく見るところも。「個人差はあるが、体力の衰えは顕著。70歳までを前提とした組織づくりは難しい」(酒造メーカー)。66~74歳までの定年延長を検討している建設会社も「体力や注意力低下に伴う事故が心配される。自動停止機能のある車両を積極的に導入していく」と対応の必要性を指摘する。

 中小企業ゆえの悩みも。60歳定年を迎えたOBを再雇用した機械メーカーは「退職前と同じ職場に入ってもらったが…。組織上のトラブルが起き(技術継承などの)メリットと相殺されてしまった」。後進の活躍の場を奪い、組織の活力低下を招かないか懸念する声もあり、人事面などの工夫も求められる。

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