第2次世界大戦で亡くなった戦没者遺骨の収集事業を進める厚生労働省が、現在は原則「歯」に限定しているDNA鑑定の対象範囲を拡大し、腕の骨や大腿(だいたい)骨での実施も検討していることが5日、分かった。専門家の意見を聞いて最終決定する。現状では歯が見つからない遺骨が多く収集されており、遺族側の要望などを踏まえ、身元特定の可能性を広げ、遺族への返還推進を図る構えだ。

 厚労省によると、遺骨のDNA鑑定事業は2003年度に開始し、これまでに1064人の身元を特定した。ただ鑑定は原則として個人の特定に必要な核DNAが抽出しやすい歯で実施し、身元が特定できた大半は遺骨のほとんどが残っているシベリア地域の抑留犠牲者らだ。

 激戦地だった沖縄や南方では、爆発に巻き込まれるなどして頭部が見つからない遺骨も多いといい、遺族らからは腕の骨や大腿骨といった「四肢骨(ししこつ)」での鑑定を求める声が出ていた。厚労省は、四肢骨での鑑定を既に実施している米国の視察などを進めてきた。

 同省によると、14年度に1437人分、15年度に1053人分の遺骨を収集したが、このうち歯がない遺骨は毎年数百人分に上る。同省はDNA鑑定の対象拡大を見据え、昨年7月以降に見つかった遺骨のうち、歯が見つからなかった遺骨55人分を焼骨せずに保管している。

 沖縄や海外で亡くなった戦没者は約240万人。遺骨収集事業は1952年度に始まり、これまでに約127万人分の遺骨が収集された一方、約113万人分が未収容となっている。

 昨年成立した戦没者遺骨収集推進法は戦没者の遺骨収集を「国の責務」とし、16~24年度までを遺骨収集の「集中実施期間」と規定。政府は、高度な科学的知見を持つ米国と共同で遺骨収集に乗り出す方針で、太平洋地域を中心に来年度から実施する見通し。【共同】

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