朝鮮通信使船の復元で参考とする「朝鮮通信使正使官船図」(佐賀県立名護屋城博物館提供・共同)

韓国・木浦の国立海洋文化財研究所にある朝鮮通信使船の模型(共同)

 【ソウル共同=長尾一史】朝鮮王朝から江戸幕府に送られた外交使節「朝鮮通信使」が日本への渡航に使った船を、全長30メートル超の実物大で復元する計画が韓国で進んでいる。南西部木浦(モッポ)の国立海洋文化財研究所などを中心に2018年末までに完成させる予定。技術面など実現へのハードルは高いが、通信使がたどった経路の実際の航行も目指す。

 安全な航行のためエンジンを搭載するものの、木造船で通信使が通った釜山から長崎県対馬市まで、さらには山口県下関市まで向かうことも検討。日韓には歴史問題など難題も多い中、担当者は「通信使による善隣外交の精神を実際の航行で再現できれば」と話す。完成のめどが立てば、航海実現に向けて日本側の自治体など関係機関との調整も進めたいという。

 通信使を巡っては、当時の外交文書などを国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」に登録する計画が日韓共同で進む。日本側では長崎や静岡など12都府県に残る約200点の資料が対象。

 伝統船の建造技術を研究している海洋文化財研究所はこれを「良い機会」と捉え、船の復元を企画。李(イ)貴(グィ)永(ヨン)所長は「登録の取り組みを盛り上げ、船の完成後は韓日交流行事に活用したい」と意気込む。

 船の外観などは韓国の文献のほか、佐賀県立名護屋城博物館が所蔵する江戸時代の「朝鮮通信使正使官船図」など、日本に残る資料も参考に推定。全長34メートル、幅9・5メートルとなる見通しだ。約24億ウォン(約2億3千万円)に上る事業費は全て国費で賄うという。

 当時の船は帆で季節風を巧みに受けて航行し、出入港時には多数の櫓(ろ)や櫂(かい)を使って操船していたが、完全な再現は難しい。外観を忠実に復元する一方、エンジンの動力で航行する見通しだ。

 担当者によると、現在は設計図や3次元CGによる完成予想図の製作段階。当時の船に使われていた松など木材も取り寄せている。「伝統船を造る技術を知る人が少なく、実際に船を組み立てる中で困難も予想される」と担当者は話している。

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