高齢者による交通事故を減らそうと、認知症の疑いがある75歳以上のドライバーに医師の診断を義務付ける改正道交法が12日に施行される。受診者が大幅に増えることから、全国で計約3100人の医師が協力するとしているが、地域によってばらつきも。診断結果は運転免許の取り消しにも直結するため、負担の大きさに医療現場からは困惑の声も出ている。

◆専門医では足りず

 改正法は、3年に1度の免許更新時の検査で「認知症の恐れ」と判定されたドライバーに受診を義務付け、医師が認知症と診断すれば免許停止や取り消しとなる。逆走などの違反をした際にも臨時検査を課す。2015年に年間約4千人だった受診者は約5万人へと急増が見込まれる。

 専門医だけでは足りず、警察庁によると開業医らを含む計約3100人が診断に協力するとしている。医師不足は回避できるとみられるが、地域によって医師数が偏る可能性がある。

 大分県では16年の診断対象となったのは25人。法施行後は20倍の約500人に膨らむ見通しだ。

 同県警は地元の専門医のほか、日頃から認知症の相談を受け付けている開業医ら約170人を選び、昨年12月から今年2月にかけて個別面談を実施。法改正の趣旨などを説明し、約120人の協力を確認した。県警の担当者は「医師が特定の地域に集中し、診断待ちが長くならないように考慮した」と話す。

 一方、島根県警は専門医約40人から協力を取り付けたが、開業医らを対象にした勉強会では「検査機器がない」「(免許取り消しにつながる診断は)訴訟のリスクがある」との意見が出ており、どの程度対応してもらえるか分からないという。

◆ばらつきが心配

 各地域の診療拠点「認知症疾患医療センター」に指定された病院からは懸念や批判が上がる。

 浜松市にある聖隷三方原病院の同センターは、認知症を判定するための初診が現在も平均2カ月以上待つ状態。法改正の影響は予測できない。

 「根本的に、医療機関に運転免許の可否判断を求めるような制度自体が問題だ」と磯貝聡センター長。開業医らの不安を和らげるための講習会も開くが「警察が示している診断書の様式は複雑だ。専門医以外でも対応できるよう、簡素化してほしい」と注文を付ける。

 徳島県立中央病院(徳島市)のセンターは通常の外来が約1カ月待ち。これとは別の緊急性が高い患者向け外来に、県警からの紹介枠を週に2人分設けた。

 認知症は症状が軽い場合、加齢による物忘れとの違いを判断するのは難しいとされる。愛知県安城市にある八千代病院の川畑信也センター長が心配するのは、診断のばらつきだ。「事故の発生を恐れて過剰に認知症と診断してしまったり、年齢が低いという理由で認知症ではないとしたり、軽度の人ほど医師の考えで左右されてしまう。判断が難しい患者は専門医に振り分けるといった仕組みが必要だ」と指摘した。【共同】

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