スポーツに詳しい地域の指導者を学校職員と位置付け、中学・高校の部活動の指導や大会への引率を任せる「部活動指導員制度」が4月から始まった。国の働き方改革の流れに沿った取り組みで、教員の長時間勤務解消が狙いだが、定着させるには指導員の質の確保が絶対条件となる。生徒の安全面などにも十分考慮し、よりよい制度に磨き上げたい。

 「制度を実際に動かすのは、中学・高校の設置者である県や市町の教育委員会。いまはそれぞれが運営規則などを検討している段階」。県保健体育課の担当者は本年度中のスムーズな始動に向け、指導員の処遇や任用方法などを詳しく決める必要性を強調する。

 新しい制度では、地域の部活動指導員を学校教育法に基づき学校職員に位置付ける。指導員を部活動の顧問にすることもできる。

 中学・高校の部活動に関しては、既に外部の人材を指導者にしている学校もあるが、これまで法令上の立場は明確でなかった。中体連や高体連、高野連など大会主催者は「引率者は原則教員に限る」と規定。そのため、外部指導者だけでは土日の試合に引率できず、顧問の教員らが付き添い、長時間勤務の一因になっていた。

 では、制度を軌道に乗せるためには何が重要なのか。基盤となるのは、運動の技量や指導力はもちろん、生徒の安全面などに十分配慮できる指導員の確保である。

 部活動に関連した重大事故は何度も起きている。2009年には大分県内で教諭が運転するバスが横転し、高校球児1人が死亡。ことし3月、栃木県の高校山岳部の合同講習会で雪崩に巻き込まれた生徒ら8人が亡くなった事故も記憶に新しい。指導員には教員と同じように生徒を預かる責任が生まれる。不慮の事態を予測して動くことも当然求められる。

 新年度当初予算で費用を確保し、指導員の任用方法などを既に決めたのは埼玉県や札幌市、横浜市などわずか。数百人規模で地域からの積極採用を打ち出しているところもあれば、安全面などの配慮から教職経験者に限定して小規模で始めるところも。報酬の額も含めて対応はまちまちである。

 佐賀県の場合、指導員を中学・高校の非常勤講師扱いにすることも視野に任用方法などを検討している。指導員は学校の運営方針を熟知した人が望ましく、教員とともに部活動の教育的な意義を学び、体罰禁止などの理解を促す研修などを受けてもらう考えだ。

 部活動の指導者の半数は、競技未経験の教員という現実があり、国は専門性の高い指導員の任用で生徒の競技力向上につながるとみる。一方、指導員は特定の競技に熱心な人が引き受けることになり、根性論による過度な練習や、勝利至上主義に陥らないよう注意することも求められる。

 文部科学省は4月末、公立校教員の勤務実態調査の結果を公表したが、中学校の教員で「過労死ライン」とされる月80時間超の時間外労働をしている人は57%に達した。教員の長時間勤務解消は待ったなしの課題である。中学・高校の部活動は日本独自の仕組みで、生徒の健やかな成長に大きな役割を果たしてきたが、教員や生徒に過度な負担となっている部分は改善していくことが必要だろう。(杉原孝幸)

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